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酒蔵探訪 02 2005年06月

「國権」 國権酒造株式会社


南会津郡田島町上町甲4037
Tel.0241-62-0036 / Fax.0241-62-3878
http://www.kokken.co.jp/

▲細井社長

 南会津郡田島町は、かつて「南山」と呼ばれた御蔵入領の陣屋が置かれ、江戸と会津を結ぶ街道の宿場としても栄えた場所である。毎年7月22日から24日にかけて行われる田島祇園祭は800年以上の歴史を持ち、国の重要無形文化財にも指定されている。その田島祇園祭で、交代で祭りを取り仕切るのが「お党屋」と呼ばれる制度。現在町内に12軒あるお党屋の一つが、國権酒造株式会社当主の細井家である。

 國権酒造は明治10年の創業。細井社長は四代目となる。「これからは若い者に頑張ってほしい」という社長に代わり、五代目・信浩氏に話をうかがった。

 「國権」の名前は、僧侶がつけたものだという。「それまでは『南光』や『亀の井』といった名前の酒をつくっていました。辻説法をしていた僧侶が当家に逗留した際に、この名前をくださったと聞いています。当時、福島県は自由民権運動が盛んでしたし、富国強兵政策も進められていた時代でした。そんな時代背景からつけられた名前だったのだと思います」と信浩氏。現在、通りに面している木造の建物は昭和9年に建てられたもの。聞けば、田島町では何度か大火があり、その都度延焼を防ごうと通りが広がったという。趣のある板塀と土壁、そして掲げられた「國権」の看板が風格を感じさせる。

 國権酒造の酒は、すべて特定名称酒。昭和30年代の国の指導による集約製造の後、細井社長が「品質の高い酒をつくりお客様の信頼を回復したい」と、酒づくりのあらゆる過程を見直した。

 たとえば原料米の平均精米歩合は55%。削り、磨いた米だけを用いる。また、酵母は流行に左右されず、昔ながらにもろみをいじめ鍛えぬいた、味と香りのバランスのよい酵母を中心に採用している。

 「うちでは、仕込み五割、貯蔵五割と考えています」と、信浩氏は言う。つまり、丹精込めて仕込んだ酒も貯蔵や流通の管理がよくなければ、お客様のもとにおいしさを伝えることができないということだ。國権酒造では、冷蔵庫タンクを設置し、貯蔵管理にも細心の注意を払っている。「お客様に飲んでいただく時に一番おいしい状態であるように。それが一番大切だと考えています」

(左から)
・純米酒 國権
・特別純米酒 國権 夢の香
・大吟醸 國権

 國権酒造には四季折々、その時期に一番おいしく飲める季節限定商品も少なくない。冬から春にかけては本醸造生原酒「春一番」や生酒、夏には生貯蔵酒、秋にはひやおろしなどがおすすめだ。「こういった酒には、季節ごとの旬の素材がまたよく合うんです。今、まさに旬を迎えた田島町のアスパラガスは、冷やした純米生貯蔵酒『てふ』に合うと思いますよ」

   写真は右から技術のすべてを注ぎ込み、手塩にかけてつくりあげた「大吟醸 國権」、地元の米と地元の酵母でつくった「特別純米酒 國権 夢の香」、幅があるが後切れがよい男酒「純米酒 國権」。いずれも通年で販売している。

 そんな信浩氏は「日本酒の可能性を広げたい」という。「世界にはいろいろな酒がありますが、日本酒ほどすぐれた醸造技術はどこにもありません。また、日本酒にはたくさんの種類があり、それぞれ表情が違います。これからは、いろいろなことを試しながら日本酒の可能性を追求し、魅力を伝えていきたいと思います。また、酒は人と人とのコミュニケーションツールとして大切な役割を果たしてくれます。『楽しく飲む』方法や料理との相性も勉強し、提案していきたいですね」

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