Loading...

酒蔵探訪 05 2005年09月

「奥の松」
 奥の松酒造株式会社


二本松市長命69番地
Tel.0243-22-2153 / Fax. 0243-22-2011
http://www.okunomatsu.co.jp/

▲遊佐勇人 社長

 「日本酒のファンになるきっかけは、二通りあると思います」奥の松酒造の第十九代蔵元、遊佐勇人社長は言う。一つは持って生まれた家庭環境。日本酒を好む家庭に育ったかどうかということで、これは先天的なものであるから変えることはできない。そしてもう一つ、日本酒との感動的な出会いをすることによって、日本酒のファンとなる場合がある。「私達は、福島県を代表する日本酒ブランドの一つとして、日本酒のファンを増やす努力をしていかなければなりません」奥の松酒造では、できるだけ多くの人が日本酒と感動的な出会いをできるよう、さまざまな切り口での挑戦を続けている。

 奥の松酒造は享保元(1716)年の創業。「奥州二本松」からその名がある。以来280余年、受け継がれる伝統と技術は常に進化してきた。自蔵精米所の採用、さらに日本酒業界ではあまり類を見ないパストライザー(瓶詰め後の殺菌設備)の導入など機械化、合理化を図りつつ、譲ることのないこだわりや熟練の技を尊ぶ。最新の設備と蔵人の技、そして永い間培われてきた奥の松ならではのノウハウを合わせる。それが奥の松酒造の酒づくりである。

▲工場

▲全米吟醸

 今年3月、奥の松酒造はこれまでにはなかったまったく新しいコンセプトの吟醸酒を誕生させた。「全米吟醸」である。通常、吟醸酒は酒質のバランスをとり、香りを引き出すために、醪の段階で醸造アルコール(スピリッツ)を添加する。この醸造アルコールの代わりに、自社の純米酒を蔵内で蒸留した米スピリッツを用いたのが「全米吟醸」だ。今後、奥の松酒造の一つの個性として、「全米」というジャンルのお酒を確立していきたいと社長は言う。

 さて、奥の松酒造が展開する「日本酒との感動的な出会い」作戦は、この秋も企画が目白押しである。去る8月27日には、例年この時期に行われる蔵の初呑み切りが行われ、300人が集まった。

 また、東京・六本木ヒルズの森美術館で9月17日から開催される国際的アーティスト杉本博司氏の写真展に合わせ、限定記念ボトルが発売される。杉本氏の作品「松林図」をラベルにデザインした純米大吟醸および全米吟醸で、同美術館ミュージアムショップなどで販売される。

 記念ボトルが「芸術」という切り口だとすれば、さらに10月1日には「食」という切り口での催しも予定されている。銀座の資生堂パーラーで、銀座の味と福島の美酒を楽しむ企画だ。シェフが厳選したメニューに、奥の松酒造のいろいろな酒を合わせて供するもので、今年はもちろん全米吟醸も登場するという。「食」の切り口では、10月1日には赤坂エクセル東急ホテル「ジパング」内レストランでも「第五回酒楽食楽の会」が催される。

 さらに「文化」という切り口も用意されている。10月18日に国立能楽堂で行われるNPO法人せんす能楽公演「無明の井」では、能と日本酒という日本の伝統的な文化のコラボレートが実現する。ロビーやレストランで奥の松酒造の日本酒が飲めるのだが、実は能楽堂で日本酒が出されるのは初めてのことだという。

(上段左から)
サクサク辛口/特別純米/純米大吟醸雫酒 金之丞

(下段左から)
純米大吟醸/吟醸/さくら吟醸

 日にちは前後するが9月24日には、郡山ビューホテルアネックスで「福島県きき酒大会2005」が行われる。「きき酒は、いわば舌のスポーツですよ」と遊佐社長。するとこれは「スポーツ」という切り口になろうか。

 県内外で、人と酒のさまざまな出会いの機会を演出し続ける奥の松酒造。「私達が提供できるのは日本酒と出会うきっかけです。ぜひ、積極的に参加していただき、一人でも多くの方に日本酒との感動的な出会いをしていただきたい。そしてそれを広く伝えたい。それが私の使命だと思っています」遊佐社長の挑戦は続く。

※掲載されている情報は取材日時点での情報であり、掲載情報と現在の情報が異なる場合がございます。予めご了承下さい。