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酒蔵探訪 06 2005年10月

「名倉山」
 名倉山酒造株式会社


会津若松市千石町2番46号
Tel.0242-22-0844 / Fax.0242-22-6179
https://nagurayama.jp/

▲松本健男社長

 名倉山。猪苗代湖の北西岸にあるこの山の名を冠する酒蔵、名倉山酒造は大正6年の創業。現在の松本建男社長で四代目となる。ご存知のように昭和60年代より東北鑑評会で17年連続受賞するなど、その酒の旨さは広く認められている。

 そんな名倉山酒造がさらなる酒質の向上を目指し、新たな取り組みを始めた。「パストライザー」の導入である。このパストライザーの導入について、松本社長は言う。「日本酒の質は明らかに向上しています。しかし、逆に日本酒の消費量は減少している。酒がまずいから売れないのなら仕方がありませんが、おいしくなっているのに売れないというのは大きな問題です。それでは次に何をすればよいか。さらなる酒質の向上には何ができるか。その一つの切り口が、パストライザーです」

 パストライザーとは、一言でいえば「瓶詰め後の殺菌装置」である。これまでは、酒を65度で殺菌してから瓶詰めしていた。これでは酒の香りはどんどん逃げてしまう。これに対してパストライザーは、酒を低温のまま瓶詰めし、栓をしてからお湯のシャワーで熱殺菌を行うので、香りを逃がすことがない。

 さらに、そのお湯のシャワーは最初は48度、次に68度と段階的に温度を上げ、その後48度、35度と温度を下げて最後に冷風で冷ます。この段階を踏んだ温度管理によって、酒質に影響することなく殺菌ができるのだ。むしろこのパストライザーが、酒の味を調える働きをしてくれるという。

 酒には「甘」「酸」「辛」「苦」「渋」の五つの味があり、そのバランスが酒の味となる。「それぞれの味は、楽器と同じです。オーケストラでは、どんなに優れたソリストがいても他の楽器と調和のとれた演奏をしなければ、美しい音楽は生まれません。酒の五味もそれと同じです。パストライザーは五味の調和をとる、コンダクターの役割を果たしてくれます」コストや作業効率面などでのリスクはあるが、それでも酒質の向上のために導入したパストライザー。そのパストライザーによって、味の調和、香味の調和のとれた「新しい名倉山」が今、次々と誕生している。上撰、普通酒から導入したパストライザー、今後は全商品への導入を目指している。なお、パストライザー導入の酒には瓶に青色のカードが提げられているので、それを目印に。

▲上撰名倉山/名倉山大吟醸/純米吟醸 月弓かほり/純米酒 月弓

 さて、松本社長が取り組んでいるのはパストライザーに限ったことではない。「日本には華道、茶道といった文化があります。日本酒も同様に『酒道』という文化としてとらえていきたいと考えています」たとえば料理との食べ合わせや、楽しみ方を提案していきたいと言う。その一つが「和らぎ水」。日本酒と一緒に時々飲む水のことで、この「和らぎ水」によって、深酔いを防いだり、翌朝の酔い醒めをスッキリさせたりすることができるという。「酒屋はこれまで、酒を二合飲む人に三合飲ませようという努力をしがちだったと思います。しかし、三合飲んで具合が悪くなったりしたら、もう二度と酒を飲まなくなってしまうかもしれません。それよりも、おいしく楽しく適量を飲んでいただき、『ああ、また飲もう』と思っていただける。私達はそんな売り方をしていかなければならないと思います」酒に合う料理の提案をはじめ、幅広い酒の楽しみ方を提案していきたいと言う。

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