酒蔵探訪 08 2005年12月
「高畠ワイン」
高畠ワイン株式会社
山形県東置賜郡高畠町糠野目2700-1
Tel.0238-57-4800
https://www.takahata-winery.jp/
奥羽の山並みに囲まれた山形県東置賜郡高畠町。縄文から古墳時代の遺跡が点在することから「まほろばの里」としてのまちづくりが進められている。フルーツ栽培も盛んで、ワインやジャムはお土産品としても人気が高い。
そんな高畠町に、山形県産のぶどうを原料とした地場産のワインをと、平成2年に南九州コカ・コーラボトリング㈱100%出資の関連会社として誕生したのが高畠ワイン株式会社だ。JR高畠駅から徒歩10分ほどの場所、1万坪もの広大な敷地にはカリフォルニア風にアレンジされたという純木造の建物のほか試験農場もあり、ぶどうの栽培からワインの製造・販売まで常によりよい品質の追及が行われている。
▲奥山徹也社長
高畠ワインの特徴として、まず挙げられるのが製造過程で加熱殺菌をせず、超精密濾過による除菌を行っていることだ。それによって果物らしい風味を失うことなく、フレッシュでフルーティーなワインをつくることができるという。
また、貯蔵管理への配慮も、当初から徹底してこだわってきた。密封タンクや流水による冷却ジャケットの導入によって、よりワインに負荷がかからずクリーンな環境での熟成を目指している。貯蔵用の樽も、フランスの六つの地域のさまざまな樽とワインの相性を研究するなど、細部にわたるこだわりが随所に見られる。
「私たちが今、全力を挙げて挑戦しているのはぶどうづくりです」と、奥山徹也社長は言う。試験農園では土壌の改良から病気への対応、収量や日当たりなど、よいぶどうをつくるためのさまざまな分析と研究が続けられている。その結果を契約栽培農家に伝え、ぶどうの品質向上は着実に進んでいる。
数年前からは、各品種のクローンの研究も行われている。ぶどうにクローンというのもピンと来ないかもしれないが、同じ品種でも、育てる場所や環境によって決して同じ味にはならない。高畠の地に最適なクローンを探し栽培する。そのための選択栽培が行われているのだ。
高畠ワインの商品は、現在60アイテムを超す。人気の「まほろばの貴婦人」は、貴腐ぶどうを含んだ(白のみ)遅摘みぶどうを原料にした華やかなワイン。「フレッシュドライシャルドネ2004」は、2004年の高畠産シャルドネの良い房だけを選んだフルーティで澄んだ味わい。昨年度ジャパンワインコンペティションを受賞した「上和田ピノ・ブラン」は、豊かな酸味とキレ味が特徴。「シャルドネ樽発酵」は、フレンチオークの新樽で発酵させ、ソフトな口当たりとうまみを醸す。「2001メルロ」もフレンチオーク樽で熟成、タンニンと旨みが一体となった味わいが楽しめる。
それぞれ特徴が違い、いずれも魅力的なワインが揃う高畠ワインは、国産ワインのコンテストでは常に多くのワインが入賞し、広くその品質が認められている。今年はまた、山形県産業委員会が選ぶ県産業賞にも選ばれた。それだけの評価を受けながら、高畠ワインは常に消費者の視点を大切にしている。手頃な値段の商品が揃うのも、ワインをより身近なものとして楽しんでほしいからだと奥山社長。
高畠ワインでは、ワインの製造過程を見学できるほか、テイスティングルームでの試飲や、売店でのワインや地元特産品の販売も行っている。ワインソフトクリームやソーセージなどの軽食コーナーもあり、ワイナリーの雰囲気をゆっくりと楽しむことができる。今後は観光ワイナリーとしての機能も充実させ、より地元に密着した企業を目指すという。
もちろん大のワイン好きという奥山社長は、自ら試験農場に足を運び、ぶどうの様子を見たりするという。「ワインづくりには、本当にたくさんの可能性があります。自然を相手にする部分もあり、時間のかかることもあります。しかし、だからこそおもしろいともいえます。私たちは高畠というこの場所で、この土地ならではのワインをつくっていきたいと思っています」
※掲載されている情報は取材日時点での情報であり、掲載情報と現在の情報が異なる場合がございます。予めご了承下さい。