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酒蔵探訪 09 2006年01月

「笹の川」
 笹の川酒造株式会社


郡山市笹川1丁目178
Tel.024-945-0261
https://www.sasanokawa.co.jp/

▲山口哲司社長

 郡山市笹川。阿武隈川とその支流である笹原川に挟まれる形のこの場所には、かつては篠川城という城があり、足利尊氏の孫にあたる足利満秀公(後の満貞)らが駐在した御所もあったという。そんな篠川城址からほど近くにある笹の川酒造は、酒造りをはじめて240年余の歴史を持つ。

 「笹の川」の清酒は、鑑評会や品評会で連続入賞を果たすなど、その安定した品質には定評がある。「清酒は、基本的なつくりということではどの酒蔵もそんなに大きな違いはないと思います。一言で言えば、『まじめなつくり』というものを心がけています」と、十代目となる山口哲司社長は言う。そして、「笹の川」では酒の『旬』にもこだわる。たとえば搾りたての「今朝しぼり」や「春酒」、そして2月にお目見えする「大吟醸新酒」、10月の「大吟醸ひやおろし」など、季節ごとに『旬』のおいしい酒を提供する。米と水、そして人の技が醸す酒を、一番おいしい状態で味わってほしいというのが、蔵の願いだ。

▲社屋全景

▲吟醸洗米

 「笹の川」では、清酒以外にも焼酎やスピリッツ、ウイスキー、リキュールなど、さまざまな製造免許を持ち、その免許を生かした取り組みも行っている。

 まず、酒蔵ならではの焼酎として人気の「吟粒」と「源粒」。清酒を蒸留し、試行錯誤の上誕生した「清酒焼酎」は、雑誌や通信販売にも取り上げられ、評判を得ている。また、焼酎については2005年、原料のイモも郡山で栽培した「純郡山産」の芋焼酎を造るなど、地元への貢献にも大きな役割を担っている。

 地域おこしとして、県内でも各地域が特産品での酒づくりに取り組んでいる話をよく耳にするが、そんな取り組みにも「笹の川」は一役買っている。

 須賀川市仁井田地区のコシヒカリを使って造った純米吟醸原酒「あかし田」や郡山市大槻町産の米を原料とした純米吟醸「おおつき」など、当初は日本酒の製造依頼が主だった。やがて近隣市町村の商工会議所やJAから依頼され、特産品の焼酎やリキュールを造るようになったという。

 アスパラガス、トマト、キュウリ、ピーマン、サトイモ…。たくさんの野菜が持ち込まれ、工場がさながら八百屋の店先のような状態になることもあるという。「それぞれの野菜などの風味をいかに出すかが一番のポイントです。勉強になりますね」と山口社長。多種多様な原料や酒づくりに取り組むことが、蔵の本流であるよりよい酒づくりにも繋がるのだ。

 「酒は人と人のコミュニケーションの材料だと思います。だから、私たちは『飲むシーンに合う酒』を提供したいと思っています」料理との相性はもちろん、雰囲気をも考えた酒造りをしていきたいと山口社長は言う。

(左から)
・蔵元焼酎「吟粒」
・大吟醸原酒「開成」
・大吟醸新酒

 季節に合わせた商品提案や、地域と連携した酒造りもその一環だが、他にも消費者へのきめ細かな対応がいくつもある。たとえばオリジナルラベルやプライベートラベルの作成、一人からでも予約をすれば案内してくれる工場見学など。

 間もなく今年の大吟醸新酒が販売される。大吟醸造りでは、精米した米を壊さないように手で洗い、米が吸収する水分量を見極める。作業は吐く息が白くなる極寒の中行われる。どんなに厳しい作業でも、これを機械で行ってはよい酒は生まれないという。「お酒は英語で"スピリッツ(精神)"。造り手の気持ちがそのお酒に現れるものです」その酒造り同様、笹の川は『まじめでていねいな』蔵である。

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