酒蔵探訪 10 2006年02月
「千駒」 千駒酒造株式会社
白河市年貢町15-1
Tel.0248-23-3057
https://senkoma-shuzou.co.jp/
今回おじゃましたのは、白河市年貢町にある千駒酒造株式会社。ご存知のように白河はみちのくの玄関口として、そして小峰城の城下町として栄えてきたところ。小峰城は14世紀に結城氏によって築城され、江戸時代の初代藩主丹羽氏が現在復元されている姿の三重櫓を構築、その後松平定信ら二十一代の藩主が居城した。また、松平定信がつくった南湖公園は、日本最古の公園として知られているほか、バラ園やフラワーワールド、白河の関など、観光名所にも事欠かない。さらには、白河ラーメンなどおいしい食べ物もある。
そんな白河市に「千駒酒造」の前身である池島酒造店が誕生したのは大正12(1924)年のこと。古くからこの付近は軍馬の産地で、馬市も盛んに行われていた。馬市には各地から馬喰が集まり、威勢のよい掛け声が飛び交う賑やかな様子が見受けられたという。「千駒」という名前は若駒の蹄の音やたくましい姿を、醸造した酒に託し、人々の健康を祈ってつけられたといわれる。
▲小針武彦社長
▲麹室手入れ
その後、昭和51年に社名を「千駒酒造株式会社」に変更し、現在に至っている。 小針武彦社長は四代目、鈴木庄一杜氏とともにていねいな酒造りを行い、全国新酒鑑評会をはじめ各賞を受賞するなど、実績を重ねている。
「うちでは、基本的に一年で売り切る分量の酒しか造りません」と、小針社長は言う。「酒は生き物です。仕込みの後、一定の熟成期間は必要ですが、それ以上長く貯蔵すると味が変わってしまいます。一年間で売り切る分量だけを造り、次の年にはまた新酒から味わっていただく。これがいつも美味しい酒を飲んでいただくための基本だと思っています。小さな蔵だからこそ、杜氏や蔵人、従業員が一つ一つの作業をていねいに行い、全てに目の届いた酒を造ることができるのです」そんな蔵の思いを象徴しているのが、「手を抜くな、よく手入れをしろ、楽をしたいと思うな」というモットーではないだろうか。
酒は、その原料がシンプルであるだけに、その質の良し悪しがすぐに味に反映してしまうという。阿武隈川の源流も近いこの場所は、「おいしい水」に恵まれている。
そして「米」である。酒の原料となる酒造好適米というと、「山田錦」や「五百万石」といったブランドが有名である。もちろんこうしたブランド米はおいしい酒ができるということでブランド化したわけで、よい米であることには間違いない。しかし、こういったブランド米を使えば絶対においしい酒ができるかというとそうではなく、造り方が合っていなければよい酒はできない。逆に高価なブランド米でなくても、その特色に合わせた造りをすれば、よい酒ができるのだ。
だから、ここでは米の特色を活かし、嗜好に合わせたいろいろな酒造りに挑戦している。同じブランドの米でも産地によって味が違う。大吟醸には兵庫県産の山田錦、純米酒には長野県産の美山錦というように、米を使い分けている。
さらに精米についても、より米の力を引き出すために、不要な部分は削り、しかし決して削りすぎることのないように見極める。もちろん自家精米だからこそこういったこだわりも可能なのだ。
(左から)
・本格焼酎「吟輝」
・純米吟醸「地水光風」
・吟醸「酒道」
・大吟醸
千駒酒造では、4年ほど前から焼酎造りにも取り組み、大吟醸の酒粕を一次醪とした本格米焼酎「吟輝(ぎんにかがやく)」などを販売している。また、100年前の酵母を復元し、醸した純米酒「古代酒 千駒」といった限定品もある。現在3月の節句にかけて販売している「千駒純米酒にごり」や、ギフト用の詰め合わせも豊富である。
製品すべてに手をかけ、目を行き届かせる。それが「千駒」の酒造りなのだ。
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