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酒蔵探訪 11 2006年03月

「大七」 大七酒造株式会社


二本松市竹田1丁目66
Tel.0243-23-0007
https://www.daishichi.com/

▲太田英晴社長

 名峰安達太良山に抱かれた城下町・二本松市。大七酒造はこの二本松の地に1752(宝暦2)年に創業した。「大七」という名は初期の「大山」という名と、三代目以降が襲名している「七右衛門」にちなみ改称されたもの。現在の太田英晴社長は十代目となる。

 大七酒造の酒づくりは、その9割以上が「生もと造り」による。生もと造りは、江戸時代元禄年間に始まった醸造法で、酒のもととなる「もと」を水と麹、蒸し米をすり下ろし発酵させて造った「生もと」を用いての醸造法。時間も手間もかかることから、現在は最初の段階から工業的な乳酸を加える「速醸もと」が主流になっている。「生もと造り」とは、いわば昔ながらの技法を受け継ぐ醸造法といえる。

▲山卸作業

▲大七酒造全景

 「生もと造り」の良さを、太田社長は次のように話してくれた。「添加物は一切加えず、自然の微生物の力だけで醸すのが生もと造りです。この土地に、そしてこの蔵に棲む乳酸菌が酒を造ります。私たちはこの生もと造りを研究し、力強い酒質とともに洗練された味わいを実現しました」かつては不可能だとまで言われた生もと造りでの全国新酒鑑評会金賞の受賞など、大七の生もと造りは広く認められている。調和した自然な香り、力強いキレの良さ、そしてなめらかな飲み口。さらに熟成して旨みを増す。蔵人の技が自然と調和してこそ生まれる、まさに「唯一無二」の酒だ。

 大七酒造では、「超扁平精米」という精米法を採用している。米の形を扁平に全体を均一の厚みで削る精米法だ。従来の丸く削る精米法だと、米の長さは大きく削られるが、横や厚みに関しては削り方が少なくなる。つまり均一な精米にならず、精米歩合によっては雑味が除去しきれないこともある。その点、「超扁平精米」は等厚に削ることができるので、米を削りすぎることなく均一の品質を得ることができるのだという。

 瓶詰めでもまた、大七は他にはないシステムを誕生させた。品質を長期的に安定して保つために、新しい充填システムを導入したのである。密封した瓶の空気を抜き真空にし、そこに窒素ガスを満たす。その後充填される酒は空気に触れることがないので酸化せず、高品質を維持することができるという。

 「超扁平精米も新しい瓶詰めラインも、米の旨みを生かす、そして品質を保つということで、すべては生もとづくりの良さを生かすためのものだと言えます」と太田社長は言う。「『洗練』と『力強さ』の両立が私たちの目標であり、これからもそのための努力を重ねていきます」

 2005年、大七酒造は新社屋を竣工した。この新社屋のコンセプトは「酒蔵は微生物にとって自然環境そのものである」ということ。これまで受け継がれてきた環境を大事に、さらにその環境をこれから先もずっと守るために、頑強な建物をつくりあげた。そして、古い蔵から新しい蔵への移行には5年の歳月を費やした。決して酒造りの工程を機械化したり、簡略化することはせず、より酒造りに適した環境を整える。そこにも生もとづくりを守り続ける大七の、酒造りへのこだわりが窺える。

(左から)
・純米大吟醸「箕輪門」
・純米吟醸「皆伝」
・純米生もと

 先ごろ、料飲専門家団体連合会が行った利き酒師などお酒の専門家140人のアンケート調査で、大七の生もと純米大吟醸「箕輪門」が清酒部門の第1位に選ばれた。「箕輪門」に限らず、大七の酒は今や全国、そして海外でも高い評価を得ている。

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