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酒蔵探訪 13 2006年05月

「花春」 花春酒造株式会社


会津若松市神指町大字中四合字小見前24番地の1
Tel.0242-22-0022
https://hanaharu.co.jp/

▲新社屋

 酒どころ会津にあって、創業280余年を誇る「花春」は、その歴史の古さからも会津を代表する銘柄の一つと言える。創業は八代徳川吉宗公時代の享保3(1718)年。鶴ケ城外堀門天寧寺口の一角で「天正宗」の銘柄で誕生、隣藩領地にも出荷し、評判を得ていたという。その後、戊辰戦争の戦火で焼失したものの、明治2(1869)年には蔵を再建し、同時に「花春」の銘柄と改めた。この「花春」という名前は、「心に花のような明るさと春のような和やかさを取り戻す」ことを願い、漢詩「花開酒国春」にちなんでつけられたものである。

 花春酒造は昨年8月、会津若松市神指町に完全移転、次の世代に向けての新たなスタートを切った。

 神指町は会津若松市の西部、阿賀川の流れに近い自然豊かな場所である。戦国大名上杉景勝がかつてこの地に神指城を造営しようとしたものの、関ケ原の合戦によって未完成となったという逸話も残る。

▲宮森泰介 社長

▲箱積みロボット

 花春酒造がここ神指町への移転を開始したのは、10年ほど前からである。酒造りに支障がないように、徐々に新しい設備を整えてきたのである。そして、次世代を担う酒造りのベースとなる酒蔵として稼動を開始した。

 花春酒造の酒造りは、かねてより品質を第一に、丁寧な酒造りをモットーとしてきた。会津の米100%、自家精米100%、そして自醸酒100%という「三つの100%」で、「会津」にこだわった酒造りを行っている。商品銘柄別に温度を変える熟成貯蔵、環境負荷の少ない充填、出荷など、酒づくりの原料から酒がお客様の手に届くまでの全てに心を配る。

 もちろんその基本はずっと変わらない。そして、新しい蔵への移転の中で、21世紀の情報化社会においてより高品質の酒を安定して提供できるようにと、さまざまな取り組みを続けてきた。その努力が今、新たな展開として実を結びはじめている。

 その一つが「姫飯(ひめいい)造り」という製造方法である。米を粥状にして仕込む方法で、もともとは短時間に能率よく酒を仕込む方法として誕生したものだが、花春酒造では、この方法の温度管理面での利点などに着目、コンピュータによる温度制御システムを組み合せ、独自の酒造りを確立した。この春の県鑑評会での入賞を果たすなど、この方法によってつくられた酒の確かな品質は自他共に認めるものである。

 また、一年を通して醸造可能な四季醸造蔵や、その高い精米技術で19%という精米歩合を実現したこともある自社精米工場も、花春ならではのものといえる。

 しかし、宮森 泰介社長は言う。「コンピュータをはじめ、新しい設備や高い技術を導入しても、酒造りを行うのはあくまでも人の技です。私共では、機械にまかせる部分はまかせ、人間が五感を使って行う作業については決して手を抜かず、極めて行きたいと考えています」コンピュータやロボットといった最新の技術を合わせて使うことで、人間の技術も一層引き立つのだ。

(左から)
・荒城の月 山廃特別純米酒
・夢の香 大吟醸酒
・吟醸花春
・会津印

 豊富な商品が揃うが、花春酒造の酒の基本的な特徴は「香りやさしく口あたりやわらか、きれいな味わい、のどごしの良さ」にあるという。「会津印」として知られる普通酒は、甘辛酸渋苦の五味が程よく調和し、飽きのこない酒。吟醸酒や、福島県独自の酒造好適米「夢の香」と「うつくしま夢酵母」を用いた「夢の香大吟醸」は、香りと旨さのバランスを楽しみたい。また、「荒城の月 山廃特別純米酒」は豊かな風味としっかりした味わいをぜひ味わってほしい。さらに寒造り新酒やしぼりたて大吟醸無濾過原酒、花見酒にひやおろしなどの季節商品、カップ酒に焼酎など、どれも花春酒造の伝統の技と酒造りへの深い情熱が醸す逸品ばかり。

 「酒は、さまざまなシーンで人と人のコミュニケーションを図る格好のツールだと思います。これからもお客様のニーズに応えながら、より愛される酒造りをしていきたいですね」宮森社長は、新しい蔵での出発を機に、さらなるパワーアップを誓う。

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