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酒蔵探訪 14 2006年06月

「開当男山」 開当男山酒造


南会津郡南会津町中荒井字久宝居785
Tel.0241-62-0023 / Fax.0241-62-0073
http://otokoyama.jp/

▲蔵外観

 旧南会津郡田島町は、江戸時代は天領地として独自の文化を育み、田島祇園祭など今も尚その古式ゆかしい伝統を伝える地域である。そしてまた、豊かな自然にも恵まれたこの場所で、開当男山酒造は300年もの酒造りの歴史を刻んでいる。

 創業は享保元(1716)年。酒造業を起こした渡部開當(はるまさ)の名が、そのまま銘柄となった。以来、会社組織をとらずに酒造りを営なんでいる。現在の蔵元、渡部謙一氏は十四代目。蔵には創業当初から使われている建物も残り、重厚な雰囲気が漂う。

 ご存知のように、田島の位置する南会津地域は、言うまでも無く「雪国」である。雪が多いだけでなく寒さも厳しく、年間の平均気温が10度以下、最低気温がマイナス20度にもなるという。開当男山はそんな寒冷地ならではの造りによって生まれた酒なのだ。

▲蔵元・渡部謙一氏

▲蔵内部

 酒造りにおいて、温度管理は重要なポイントだが、中でも温度を上げすぎないように苦労する酒蔵は多い。しかし、ここでは逆である。昔から低温での管理はお手の物。むしろ必要なときに暖める工夫を施してきた。もろみの発酵も長期低温を保つことができ、それが独特の酒質を生み出している。もちろん今では冷蔵設備などの導入により、さらに徹底した温度管理が施されているが、300年近くに及ぶ開当男山は、この地の気候によって育まれてきた部分が大きい。

 その酒質はといえば、「一口で言えば、『きれいな酒』です」と蔵元。寒冷地の気候と、清らかな雪解け水によって醸された酒は、力や技を感じさせない(もちろん造る過程において技も力も注がれているのだが)清らかな飲み口に仕上がっている。

 原料米は、地元産の夢の香が中心。他に山田錦なども用いる。吟醸には専用の仕込み室を設けるなど、キメの細かい造りを行う。

 商品アイテム数は120を数える。今でこそ多くの蔵元がさまざまな商品を販売しているが、開当男山ではかなり以前からアイテム数を増やす取り組みをしてきたと言う。「お客様の選ぶ幅を増やし、より好みの酒を提供したかった」と蔵元。

 特別純米大吟醸「久宝居(くぼい)」は、杜氏と蔵人の技術の結晶とも言える酒。また、大吟醸は上品な香りとさらりとした喉越しが特徴。純米吟醸は穏やかでありながら飲むほどに旨みを感じる。そして、純米酒は米が醸すまろやかな味わいを楽しめる。いずれも決して強く主張しすぎることなく、それでいて存在感のある酒ばかり。

(左から)
・純米酒
・純米吟醸
・大吟醸
・特別純米大吟醸「久宝居」

 また、本格焼酎も2アイテム。7年ものの「渡」と、15年ものの長期熟成粕取焼酎「福寿草のほほえみ」。

 12、3年前からは飯野町の農家の依頼で、飯野町産のコシヒカリによる酒造りなども行っている。

 蔵元は毎年必ず一つは新しいことに取り組むことにしていると言う。「少し造りを変えたり、新しい試みをしたり。それが実際に商品となる場合もあるし、そうならない場合もあるのですが、私自身にとっても、そして蔵の人間にとっても励みになっていますね。酒造りは地味な作業の積み重ねですから、そんな中で造る側も楽しみを見出したいと思っています」

 田島といえばレスリングが盛んな地である。先代の蔵元も地元のレスリングの振興に尽力し、現在蔵では国体選手も働いているという。開当男山は地元の風土に根ざした酒蔵である。

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