酒蔵探訪 15 2006年07月
「金寶」 有限会社仁井田本家
郡山市田村町金沢字高屋敷139
Tel.024-955-2222 / Fax.024-955-5151
https://1711.jp/
▲樽看板
郡山市田村町。郡山市の東部に位置するこの地で、仁井田本家が酒造りを始めたのは正徳元(1711)年のこと。かつてこの地は「金沢村」といい、当時の仁井田本家の屋号が「寶来屋」であったことから、「金沢村の寶来屋」、「金寶」という銘柄が生まれたという。現在十八代蔵元、仁井田穏彦氏が取り仕切る。
「金寶」が代表銘柄である「金寶自然酒」を造りはじめたのは昭和42年のこと。今でこそ有機米などを使った酒をつくる蔵が各地にあるが、「金寶自然酒」はそのさきがけ的存在といえよう。
ここで、改めて「金寶自然酒」について説明すると、農薬・化学肥料を一切使わず栽培した酒米(自然米)と、山間より湧き出る阿武隈山系の伏流水を使い、独特の四段仕込みで醸し、じっくりと熟成させた純米酒のこと。瓶詰め時の加水も行わないため、日本酒の自然のままの琥珀色で、とろりとした甘みとふくよかな旨みを持つ。
▲十八代蔵元 仁井田穏彦氏
▲ふれあい体験
何よりもこだわりは原料米である「自然米」と言える。県内外の四つのグループによる契約栽培のほかに、自社田を有し、蔵元も含めた社員総出で米づくりにも携わる。しかも地元の農場の鶏糞堆肥のほかに、今年から酒粕なども混ぜ込んだ独自の堆肥を研究したり、草取りにはかぶとえびや新型紙マルチなど試行錯誤を重ねるなど、積極的に取り組んでいる。
「金寶」が用いている自然米は「夢の香」、「一本〆」、「美山錦」、「チヨニシキ」、「トヨニシキ」の五種類。それぞれ特長を生かして使い分ける。この自然米が、蔵の総仕込使用米の87%を占める。これを創業300年を迎える5年後の2011年までに100%にするのが当面の目標だという。
さらに、「蔵のあるこの田村町を『真の田舎』にしたいと思っています」と蔵元。質のいい水と米を育むこの土地の環境を守っていきたいと言う。自ら自然米の栽培に取り組む中で、地元の熱意溢れる農業生産者とも知り合い、地元への愛着と誇りも一層深まったと蔵元。「田村町有機の里計画」なる"たくらみ"も密かに進行中らしい。
原料とともに、酒蔵の衛生面にも気を配る。「日本酒は口に入るものですから、日常の蔵内清掃はもちろん、蔵人の清潔感、見学時のアルコール消毒等万全の体制を整える。柿渋を塗り、磨きこまれた床と真っ白な漆喰に囲まれた落ち着きある蔵もまた、「金寶」の自慢である。
さて、そんな「金寶」の酒は、「自然酒ブランド」と「穏ブランド」に分けられる。「自然酒」の方では、特別純米酒「特撰自然酒」、純米原酒「優撰自然酒」、純米酒「穂の香」などの商品がある。いずれもふくよかな旨みや香りに特徴を持つ。
一方、「穏」は上質な味のふくらみとともにキレの良さを持ち、大吟醸や純米大吟醸、特別純米酒などを展開している。「自然酒」「穏」ともに季節商品も展開し、日本の四季と日本酒の旬を楽しんでもらえるようにと提案している。
(左から)
・あまさけ720
・自然酒 旬味720
・自然酒 優撰720
自然酒から生まれた料理酒「旬味」や、ノンアルコールの「あまさけ」もファンが多い。「旬味」はもちろん自然米仕込み。20種もの天然アミノ酸を含む豊醇旨口の純米料理酒である。また、「あまさけ」は4月から9月の期間限定商品。自然酒の酒粕で造られた、贅沢で繊細な味わい。冷たく冷やして飲むのがおすすめだ。
「造り手が見える、お客様が見える酒造り」が金寶のモットーだ。「多くのお客様とふれあい、より深いお付き合いができればと思っています」そして目指すのは、「日本の田んぼを守る酒屋」である。今年は自社田での米づくりに一般の参加を受け入れる「金寶自然田ふれあい体験」を実施している。既に田植え、草刈りが終わり、秋の稲刈り、冬の仕込みが予定されている。
地域に根ざし、その地の恵みを最大限生かした酒を醸す。「金寶自然酒」は、まさに『自然体』な酒である。
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