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酒蔵探訪 16 2006年08月

「蔵粋」 小原酒造株式会社


喜多方市字南町2846
Tel.0241-22-0074 / Fax.0241-22-0094
http://www.oharashuzo.co.jp/

▲外観

 今年、2006年はモーツァルトの生誕250年に当たるということで、年初より記念CDやテレビ番組などでモーツァルトの曲を耳にすることも多いのではないだろうか。そんなモーツァルトの曲を、15年以上前から酒造りに活かしている蔵元がある。それが、今回ご紹介する喜多方市の小原酒造である。

 小原酒造は享保2(1717)年の創業。「小檜山」「国光」「一○(いちまる)」といった銘柄で酒を造り、現在代表取締役を務める小原公助氏は十代目になる。そして十代目が平成に入り世に出した酒が、モーツァルトを聴かせて醸した「蔵粋」である。

▲代表取締役 小原公助氏

▲蔵内部

 それまで、国税庁の研究所では、酵母に超音波を当ててどう変化するかといった研究は行われていたという。そんな中で小原氏が取り組んだのは有音、つまり人間の耳に聴こえる音で刺激を加えることだった。「酒ではありませんが、ドイツでは乳牛に音楽を聴かせているところもあります。搾乳に効果を及ぼすという実例も伝えられています。人間にとって気持ちのよい音楽は、きっと酒にもよい変化を与えるのではないか。そんな思いから研究を始めました」と小原氏。最初はクラシックに限らず演歌やジャズ、ロックなどさまざまなジャンルの曲を聴かせたという。その後次第にクラシックがいいということがわかり、ベートーベンやバッハなど、さまざまな名曲を辿り、やがてモーツァルトにいきついたという。

 実際には、低温長期醪に音楽を聴かせるのだが、仕込みタンク上部にスピーカーを取り付けて音楽を流す。それによって醪中の酸度やアミノ酸度、酵母密度や酵母の死滅率がどのように変化するかを比較。その結果、モーツァルトを聴かせることで醪は高い酵母密度を保ち、死滅率も低くなることが確認された。そして、モーツァルトを聴かせた醪から製成した酒の酒質は良好で、アミノ酸生成も低いことから、雑味のすくないきれいな酒ができることがわかった。

 実際、「モーツァルトを聴かせた酒」の商品化にあたっては、これを機会に蔵元のイメージチェンジも目指し、新銘柄を検討、「蔵粋」という名前が誕生した。蔵の町・喜多方にふさわしく、なおかつモーツァルトを聴かせた酒をもイメージさせる名前として付けられた。

 タンク一つ一つの上にスピーカーが備え付けられている。酵母に聴かせる曲も複数あり、さらには時間など聴かせ方も変えながら、よりよい酒の状態を目指しているという。

 小原氏が「蔵粋」誕生の頃から目指しているのは、まじめにいい酒を造ること。「いわゆる三増酒やアル添酒といったものは、米が不足していた時代の産物です。今、日本酒に限らず、『安全』で『おいしい』ことが求められています。私たちは原料である水や米も大切に、まじめな酒造りをしてきたいと思っています」五百万石は地元の生産農家の契約栽培米、山田錦は兵庫県産のものを使う。そして水は飯豊山の伏流水。「ずっと、自分でおいしいと思える酒、自分が飲みたいと思う酒を造りたいと思っています」

(左から)
・特別本醸造蔵粋
・吟醸無ろ過モーツァルト
・純米無ろ過モーツァルト

 2006年5月、モーツァルトの生誕250年を記念して登場したのが「純米無ろ過モーツァルト」と「吟醸無ろ過モーツァルト」。ゴールデンウィークに東京の国際フォーラムで行われたモーツァルトのコンサートでも販売され評判となった商品。生誕250年の話題性もあるが、もちろん中身もモーツァルト仕込みのおいしさで、華やかな香りとまろやかな味わいが見事なハーモニーを醸す。

 「蔵粋」の銘柄は本醸造、大吟醸、純米酒などが揃い、それぞれに豊かな特徴を持つ。「マエストロ」や「協奏曲」、「夜曲」といった音楽にちなんだ言葉が酒名に添えられているのもおしゃれだ。

 喜多方の恵みと小原氏の誠意、そして蔵の技術にモーツァルトも加わって、小原酒造の酒造りはいわば「四重奏」といったところだろうか。

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