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酒蔵探訪 19 2006年11月

「会津ほまれ」
 ほまれ酒造株式会社


喜多方市松山町村松字常盤町2706
Tel.0241-22-5151 / Fax.0241-24-4600
https://www.aizuhomare.jp/

▲唐橋幸市郎社長

 「会津ほまれ」として広く親しまれるほまれ酒造株式会社は大正7年、その前身である加納酒造株式会社として誕生。その3年後の大正10年に本社工場を設立、社名も唐橋酒造場と改め、本格的な酒造りに取り組む。昭和24年にほまれ酒造株式会社を設立し唐橋醸造場を統合、現在に至っている。「ほまれ」という銘柄は、「地元の"ほまれ"となれ」という願いを込めて付けられたといわれる。ラベルでおなじみの特徴のあるやわらかな書体は、長野県生まれの近代書家・比田井天来氏の揮毫によるものだ。

 三代目社長である唐橋幸市郎氏は現在、福島県酒造組合の理事長も務める。「ほまれ酒造の酒づくりは、建築で言うところの“在来工法”が基本です」と唐橋氏は言う。昔ながらの日本酒のつくり方に忠実に則りながら、機械に置き換えた方がよい部分は積極的に機械化をすすめている。「たとえば温度管理など、人間が行うより機械を使った方がより正確に行えます。効率面だけでなく、機械化はより丁寧な酒づくりにつながります」空き瓶の洗浄や検査を行う機械もいち早く導入し、リサイクルにも貢献している。

▲スケール感のある工場内

▲雲嶺庵

 そして、原料となる米は、五百万石を中心に地元での契約栽培を行う。この契約栽培にも、ほまれ酒造は早くから取り組んできた。

 そして水はもちろん、名峰飯豊山の伏流水。天然のミネラルをバランスよく含んだ軟水が、こだわりの米とともに、"在来工法"で味わい豊かな酒となるのだ。

 機械化にしても、米の契約栽培にしても、ほまれ酒造の酒づくりは、常に前向きである。「私の祖父である創業者も、常に技術革新に努力をした人でした。機械も積極的に導入し、麹をつくる機械などはそれこそ日本で二番目に早く入れたと聞いています。開拓精神のようなものは代々受け継がれているのかもしれませんね」

 辛口やにごり酒にも早くから取り組み、商品化してきた。辛口を発売したのは30年前。また、その辛口のパック酒は、今年発売25周年を迎えた。他にも有機栽培米でつくった「勇気百倍」や、松茸を入れた「松茸酒」など、アイデア商品も多い。

 現在、唐橋社長が取り組んでいるのは、全麹の酒を長期熟成させたもの。近々発売予定ということで、「貴腐ワインのようだ」というその酒を味わうのが楽しみである。

 注目の新商品「ならぬことはならぬものです」(純米原酒、吟醸原酒)は、ご存知会津藩「什の掟」を締めくくる言葉を商品名にしている。会津の歴史と心を象徴するネーミングに、本格派とも言える確かな味わいが深みを添える。

 本格的な日本酒シーズンを迎え、今年も季節商品が登場している。「しぼりたて生」や「にごり酒」12月には「無濾過純米生原酒」も本数限定で登場する。

(左から)
・辛口パック
・にごり酒
・しぼりたて生
・ならぬことはならぬものです(純米酒)

 今年の新酒鑑評会で、福島県は全国一の金賞数に輝いた。酒造組合のトップとして唐橋氏の果たした役割は大きい。「日本酒の低迷が言われて久しい今日ですが、日本酒のファンは今でもたくさんいらっしゃいます。私たちは、そんな日本酒ファンの方、そしてこれからファンになってくれる方のために、魅力ある日本酒をつくっていかなければならないと思います」と唐橋氏。

 本社社屋工場は、実に1万8千坪の敷地を有する。案内していただいた工場では、一つ一つのタンクの大きさに驚き、機械化され機能的なシステムにも目を見張った。その一方で、敷地内には900坪もの日本庭園「雲嶺庵」がある。趣ある庭園は、その背景に磐梯山の山頂も見ることができるという。広大で機能的な工場で、昔ながらの酒づくりを現代にふさわしい方法で続けるほまれ酒造。そこには喜多方という地の恵みとともに、社長をはじめ酒づくりに取り組む人々の柔軟な発想、そして気骨が強く息づいている。

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