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酒蔵探訪 22 2007年02月

「大和川」
 合資会社大和川酒造店


喜多方市字寺町4761
Tel.0241-22-2233 / Fax.0241-22-2223
http://www.yauemon.co.jp/

▲九代目 佐藤弥右衛門 氏

 蔵のまち喜多方。大和川酒造店は江戸中期の寛政2(1790)年の創業以来、200年以上にわたりこの地で酒造りを営んできた。

 「大和川」という名は創業以前、本家が営んでいた綿花栽培事業が奈良の大和川の岸辺を整備して行われてきたことに由来し、その本家から分家した蔵元も「香久山」「大和錦」といった銘柄を使っていたこともある。

 大和川酒造店の酒造りは、一言で言えば「地域とともにある」と言える。「200余年にわたり、この場所で酒造りをしてきました。それは、地元の米、地元の水を使ってきたからこそのことです。私たちにできるのは、酒は酵母が造るもの。よい原料を選び、よい環境をつくることです」と、九代目佐藤弥右衛門氏。

▲創業当時の風情を残す本店

▲飯豊蔵

まず、酒米については、大和川酒造店ではいち早く自社田や契約栽培農家での無農薬、減農薬無化学肥料の良質な米の栽培に取り組み、平成九年には農業法人を立ち上げた。社員総出で、「五百万石」、「夢の香」、「山田錦」などの酒米づくりを行っている他、そばの栽培なども行っているという。「すべての原料米を自社田でというわけには行きませんが、米やそばの栽培を通して、命を育む『農』の重要さを感じています」単に酒を生産する"加工屋"でなく、原料にまで責任を持つ"酒づくり"をしたいと佐藤氏は言う。

もう一つの重要な原料である水は、言うまでもない飯豊山の伏流水。200年間変わらず大和川の仕込み水として使われている。そして、やはり杜氏をはじめ仕込みに関わる人の手も忘れてはならない。

平成2年、大和川酒造店では郊外に「飯豊蔵」を新設した。機械化が図られ、酒造工程はぐんと省力化した。「いわゆる昔ながらの作業の中で、力仕事の部分を機械に委ねることができました。しかし、肝心な部分は長年の経験による人の技が必要です」大和川では越後杜氏による酒造りが行われてきたが、その技は今も受け継がれてきている。「杜氏には、昔ながらの酒造りのことを見学者や観光客に話してもらうこともあります。酒は日本の文化であり、それを造る杜氏の技や酒造りの節目の行事なども大切にすべき伝統文化だと思っています」佐藤氏にとって酒は商品でもあり、先代から受け継ぎ、後に伝えるべき文化でもあるのだ。

その日本の文化を、大和川酒造店では広く海外へ伝えようとしている。ヘルシーでおいしく、しかも見た目にも美しい日本食が世界各国でブームとなっている今、日本酒も海外に広めるチャンスだと佐藤氏。「日本酒は今、まちがいなくグローバル化しています。私は酒それだけを海外に持っていくのでなく、ライフスタイルごと伝えることで、その繊細で高品質な味わいを知ってもらうことができると考えています」ニューヨークやロンドン、バンクーバーや上海など、各地で大和川の酒は好評を博している。

(左から)
・良志久シリーズ
・純米吟醸レトロ 酒星眼回
・カスモチ原酒 弥右衛門酒
・純米大吟醸いのち

 大和川の醸す酒は、米本来の味を生かした酒。有機無農薬米を使った「純米大吟醸いのち」は、大和川の米に対する思いの込められた酒。また、米麹の量を増やし低温長期発酵させた「カスモチ原酒弥右衛門酒」や特別栽培米を磨き醸した「純米吟醸レトロ酒星眼回」、さらに蔵の茶室の名をとった自然体の「良志久」シリーズ。いずれも個性というより、大和川の思いが伝わる酒である。季節限定の商品も多い。「今は設備や流通が変化し、生に近い状態の酒を市場に出すことも可能になりました。夏仕込みや無ろ過などもぜひ試していただきたいですね」飲んだ人に「おいしい」という感動を与えることが何よりの目標だという。

 創業当時の風情を残す本店は、現在は「大和川酒造北方風土館」として一般に開放している。井戸跡や釜場、昔の酒造りの道具などの見学もできれば、演奏会や展示なども行われ、観光客や地元の人に親しまれている。

 大和川酒造店はまさに、喜多方の地に生まれ、喜多方の地を醸す酒蔵である。

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