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酒蔵探訪 23 2007年03月

「ワイン工房あいづ」
 有限会社ホンダワイナリー


猪苗代町大字千代田字千代田3-7
Tel.0242-62-5500 / Fax.0242-62-5500
https://www.hondawinery.co.jp/

▲「ワイン工房あいづ」の外観

 耶麻郡猪苗代町。磐梯山を背に、眼下に猪苗代湖を見晴らすこの町は、四季を通して観光会津の入口として親しまれている。この町に1月に誕生した小さなワイナリーが、各方面から期待と注目を集めている。

 有限会社ホンダワイナリー。代表取締役の本田毅氏は、昨年春まで県立高校の教諭を勤めてきた人。会津工業高校などで電子工学や情報技術を教えてきたというから、およそワイン醸造とは無縁の世界にいた。「定年を迎え、第二の人生に何をしようかと考え、ワインを造りたいと思ったのです」という本田氏。もちろんずっとワインが好きだったということもあるが、実はワインの原料であるぶどうとは生まれながらの縁もある。本田氏は、ぶどうの産地として知られる山形県南陽市の出身で、父親は園芸高校の教諭を勤める傍らぶどう園も経営していたという。

▲代表取締役 本田毅氏

▲醸造室の内部

 本田氏が目指したのは、少量でしかもいろいろなワインを手軽に造れるようなワイナリー。さらに、ワインを造る工程をも楽しめるようなワイナリーはないものかと模索する中で、本田さんが出会ったのが、北海道やカナダの小規模なワイナリーだった。早速奥さんと一緒に北海道、そしてカナダへと向かい、ワイン造りを学んだという。

 ワイン造りを学ぶと同時に、会社設立と醸造免許の申請など、開業に向けての準備も進め、11月に免許を取得、最初の仕込みは11月19日に開始した。

 ワイン工房あいづのワイン醸造は、容量23Lのガラス容器を用いて行う。カナダのワインエキスパート社という、世界各地から選りすぐったぶどうを集めて販売する会社から厳選したぶどう果汁を輸入し、まずはイースト菌を加えてタンクで一次発酵を行う。その後澱引きしてガラス瓶での二次発酵、さらに2週間以上熟成を経てワインができあがる。醸造室には醸造中のワインが入ったガラス瓶がずらりと並び、おいしいワインとなるべく発酵や熟成を続けている。

 こういったガラス容器を用いてのワイン醸造は、カナダや北米ではよく見られるそうだが、日本では北海道に数社あるのみとのこと。ガラス瓶ごとに使うぶどう品種を変えるなど、小回りの利くワイン造りができる。また、醸造の様子を観察することもでき、さらに雑菌が入りにくいという利点もある。ちなみにガラス瓶一本で、720ml瓶なら30本ほどになる。少量多品種を醸造可能という特色を生かし、現在10数種のブドウ果汁を使用。それぞれのブドウの味わいを生かしたオリジナルワインを造っている。

 本田氏が試験的に取り組んでいるのが、北会津産の巨峰による醸造だ。「巨峰は食べては甘いが、ワイン醸造には糖度が足りないんです。どうしたら巨峰らしいワインを造ることができるか、試行錯誤を続けています。また、北会津のぶどう園では、新たにワイン用のぶどうを作ってくださることになりました。地産地消、いずれ文字通り"会津のワイン"が造れたらと思っています」

▲ラベルにはおきあがり小法師をデザイン

 ワイン工房あいづでは、体験コースが豊富に用意されている。仕込みから瓶詰めまで、ワイン造りのフルコースを体験でき、自分だけのワインを醸造することのできる「オリジナルマイワイン醸造コース」や、工程別にラベル貼りやキャップシールの取り付け、瓶詰め、コルク栓などを体験できる「工程別体験コース」など、ワインを味わう楽しみとともに、造る楽しみも体験できる。さらに、ぶどう品種の種類を選んで醸造を依頼する「マイワインおまかせコース」(体験はなし)も、ワイン好きには興味深い。ホテルや飲食店などからの申し込みや問い合わせも多く、県内外の観光関係者の見学、体験申し込みも相次いでいるという。

 「夢を醸し、味わいを創る」工房内に記されたこの言葉は、本田氏のワイン造りへの思いだという。ワイン工房あいづは、誕生したばかりの、実に小さなワイナリーである。しかし、その独特のワイン醸造法や体験コースなど、観光をはじめ各方面での可能性も大きく、地元にとどまらない期待が寄せられている。

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