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酒蔵探訪 30 2007年10月

「谷乃越」 白河銘醸株式会社


西白河郡西郷村小田倉中庄司4-2
Tel.0248-25-1121/Fax.0248-25-2288
http://www.shirakawa-meijo.com/

▲白河銘醸の工場

 西白河郡西郷村は、那須山麓に位置する自然豊かな場所。日光国立公園の甲子温泉や阿武隈川の源流、楽翁渓の景観などには、県内外の観光客が四季折々に訪れる。一方でこの地域は、国道四号線や東北自動車道、東北新幹線など幹線道路や高速交通網にも恵まれ、豊かな自然とともに、産業面での発展も遂げている。

 そんな西郷村に白河銘醸が誕生したのは昭和44年のことである。当初はこの地域の蔵元6社の共同瓶詰所として開業した。その後3社が抜けたことから、自ら独特の切り口での商品開発と営業を始め、現在商品アイテム数は300にも上るという。

▲大谷恭太郎社長

 「いわゆる『隙間産業』です」と話すのは、大谷恭太郎社長。「日本酒は日本に古来から伝わる飲み物。安くて安心な飲み物として提供していきたい」と、特定名称酒にこだわらない、むしろいかにリーズナブルな酒を提供していくかにこだわった酒造りを行っている。

 大谷社長が生まれ育った蔵、大谷醸造の歴史は古い。1千年も前の、東北以北がまだ「蝦夷」と呼ばれていた時代には既に酒造りを行っていたという。「谷の越」という名についてもかなり昔から使われているらしいが、はっきりとした起源は不明だ。「その昔は『越の谷』だったという説もあるんです。昔は横書きする時に右から左に書いていたのを、いつの間にか逆から読んだのでは、というんです」と、大谷社長は笑う。

 白河銘醸の商品は、実にオリジナリティにあふれる。昭和45、6年の創業間もない頃から小売店や問屋のオリジナル商品を提案して販売するなど、時代に先駆けた営業を展開してきた。今でこそ、結婚式に新郎新婦の名入りラベルの日本酒を引き物にすることなど珍しくなくなったが、それも白河銘醸では当初より行ってきた。「他でやっていないことをやる、そんな隙間産業としてやっていくことで業績を伸ばしてきました」だから、商品数アイテムは300を数え、販売先も全国各地に広がっているのだ。

 また、白河銘醸では地域ブランドも展開している。福島県を代表する名山「会津磐梯山」や、隣県とはいえすぐ近くの「那須高原」などだ。さらに夏場にはナチュラルウォーター、そして地元で栽培されたブドウを用いてのワインも生産、販売する。  さて、先に紹介したように、大谷社長が目指すのは「安くて安心な日本酒」造りである。その思いが形になったのが「米だけの酒」である。「いわゆる純米酒なのですが、純米酒というのは3年ほど前の酒税法の改正で米麹が全体の15%以上に決められています。『米だけの酒』は、12、3%なんです。だから厳密には純米酒とはいえない。そこで、『米だけの酒』としたのです。一般の純米酒より、飲みやすいと思います」アルコール分は12度ほど。もちろん醸造アルコール、糖類などの添加物は加えず、文字通り米だけの酒。値段もリーズナブルで「財布にも安心」な酒だ。

▲豊富な商品

 「アルコール分を抑えると、販売価格を抑えることもできるし、実際飲みやすいのではないかと思います」という大谷社長だが、実はこれにはきっかけがあった。40年ほども前に、ある蔵元を訪ねる機会があったそうで、その蔵元が自分の蔵の酒をお湯で割って飲んでいた。夏には水で割るのだという。理由を訊ねると、その蔵元は割らずに飲むと、野球中継の途中で眠ってしまうからだと答えた。この方がうまいとも教えられ、大谷社長は自ら割合を考えながら試したそうで、それが現在のアルコール分低めの商品につながっているのだ。

 「酒は嗜好品です。だから、鑑評会での評価も絶対のものではないと思います。飲む人が楽しく飲めることが大切だと思います。また、日本酒離れが進む中で、『日本酒は飲みにくい』というイメージを払拭する必要もあると思います。多くの人が気軽に日本酒に触れる機会を持てるよう、これからも消費者心理に立った酒造りをしていきたいですね」独自で開発した技術により、1年を通して仕込みを行うのもリーズナブルな酒造りの一助となっている。決して品質を落とすことなく、「よりよい酒」造りに向けた研究が日夜重ねられている。

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