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酒蔵探訪 31 2007年11月

「本格麦焼酎 白沢」
 薩摩酒造株式会社塙蒸留所


東白川郡塙町大字板庭字原木沢32
※塙蒸留所は平成21年3月にて休業。「白沢」の製造・販売は終了しました。

▲蒸留所全景

 九州は鹿児島市から薩摩半島を西南に50キロほど。東シナ海に面した枕崎市に、今回ご紹介する薩摩酒造(株)の本社がある。「本格焼酎・さつま白波」や「本格焼酎・神の河」は今や全国的におなじみの商品である。

 平成元年、東白川郡塙町に塙蒸留所が開業。これは焼酎ブームに先駆けて全国展開を図るべく、東日本の拠点として誕生したものだ。平成3年7月には製造免許を取得し、営業所として稼動する。

 ここ、塙蒸留所で製造するのは麦、米、そばを原料とした焼酎が中心だ。というのも、薩摩酒造の主力商品である芋焼酎は原料も生にこだわるまさに本格派。従って製造場所も自ずと限られる。鹿児島県内には本社のほかに三つの蒸留所と瓶詰め工場があり、そちらで芋焼酎を中心とした製造をおこなっている。「塙蒸留所では米、麦、そば焼酎の他、地域PBにも取り組み、現伊達市白根地区のタカキビを用いた焼酎なども毎年製造しています」と話してくださったのは、東京支店主任として蒸留所を統括する石井勝弘さん。

▲石井勝弘 氏

 東日本の拠点として誕生した塙蒸留所だが、実は焼酎製造に大変適した場所でもある。

 まず、水がとてもいいのだ。蒸留所で使う水すべてを地下水でまかなっているというこの場所は、なるほど昔から名水の地として名高い。阿武隈山系と八溝山系に挟まれ、岩盤に豊かな水をたたえるこの地方。鮎釣りのメッカ、久慈川とその支流が流れ、こんにゃくの産地としても知られてきた。「冷たい水で仕込むと、焼酎の香りを逃がさず、閉じ込めておくことができるんです」と、石井さん。

 また、蒸留所があるのは標高800m程の小高い山の上。県内では比較的暖かい東白川地方において、真冬には時に氷点下10度、20度という気温の日もあるという。この低温の環境も焼酎づくりに適しているのだ。

 そんな塙蒸留所でつくられる「本格麦焼酎 白沢」は、当地の清らかな水で磨かれた焼酎。「白沢」という名は一般公募で決められたというが、薩摩酒造の「白波」のイメージとも通じ、さらに水の美しさを表現している。1.8Lから900ml、300mlなど、使い勝手のよいアイテムが揃う。さらに、長期貯蔵・熟成した「白沢・壺」「塙・壺」は、よりまろやかな味わいが楽しめる。

 塙蒸留所が、地元福島にこだわって製造した商品が「夢春雷」である。これは福島県内で生産された「シュンライ」という品種の麦を原料としたもので、地産地消の麦焼酎。「シュンライ」は香りと甘みの豊かな小粒麦で、それを塙の名水で仕込む。名前のように華やかな香りと、麦焼酎らしいすっきりした味わいが人気だ。

 さらに、11月1日には、塙蒸留所ならではとも言える商品が発売された。「本格焼酎 匠屋南北」である。これは、芋焼酎のふるさと鹿児島県枕崎市で仕込んだまろやかな口当りの芋焼酎の原酒と、塙蒸留所製造の爽やかな飲み心地の麦焼酎の原酒をブレンドした、今までにない味わいの本格焼酎。芋焼酎の豊かな味わいを活かしながら重すぎず、麦焼酎の持つ爽やかさも加えた絶妙のバランス。まさに、南北の素材を生かした匠の技の結晶を意味する名前に相応しい。

(左から)
・匠屋南北
・夢春雷
・白沢 900ml
・白沢 720ml

 工場内を案内していただくと、さまざまな機械やたくさんのタンクが整然と据えられていた。一度に2トンもの麹を仕込む製麹器など、なかなか見ることのできない機械も見せていただいた。「鹿児島の工場は、この何倍もの大きさの製麹器があるなど、スケールが違います」と石井さんに教えられ、九州の焼酎文化のパワーを感じた。

 県内には他に、焼酎を製造している酒蔵もいくつかあるが、焼酎だけをこれだけの規模で製造している蒸留所はないだろう。焼酎は、原酒を割り水して製品化する。割り水に用いる水によって微妙な違いもあるという。水に恵まれた塙蒸留所で製造された焼酎は、間違いなく塙の魅力を醸す。県内産焼酎としてこれからも親しんでいきたい。

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