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酒蔵探訪 33 2008年1月

「東光」 株式会社小嶋総本店


山形県米沢市本町2-2-3
Tel.0238-23-4848 / Fax.0238-23-4863
https://www.sake-toko.co.jp/

▲趣ある小嶋総本店外観

 上杉謙信を藩祖とする米沢藩の城下町として栄えた地である。謙信の跡を継いだ初代藩主・上杉景勝。景勝の重臣・直江兼続は知将として知られ、九代藩主・上杉鷹山はその徹底した藩政改革により藩内の多くの人を救った。そんな米沢藩の歴史は、米沢にとどまらず、今なお多くの人に語り継がれている。

 その米沢にあって、実に米沢藩より長い歴史を持っているのが株式会社小嶋総本店である。慶長2(1597)年に創業し、藩の御用酒屋を務めるなど、名実ともにこの地を代表する老舗酒蔵だ。現社長の小嶋彌左衛門氏で二十三代目となる。大正時代に移築したという本店の建物も築300年は経つといい、黒い板塀やなまこ壁が趣を漂わせる。この建物、2007年秋に米沢市景観賞を受賞している。

▲小嶋彌左衛門 社長

 現在、小嶋総本店の中心ブランドとなる「東光」の名は、明治期に入ってから付けられたといわれる。「日の出のように隆盛たれという意味で付けられたとも聞きますが、実ははっきりしたことはわからないんです」と小嶋社長。「しかし、東光寺というお寺が各地にあるように、東光は薬師如来と関係があるそうです。薬師如来は薬の神様で、酒は百薬の長と呼ばれる。改めて、東光という名前はいい名前だと思っています」

 400年を超える年月の間にはさまざまな苦労もあったという。戦争による統制経済の強化で強制的な企業合同が進められ存亡の危機に立たされたこともあった。また、米沢は大正時代に2度の大火があり、小嶋総本店もその被害に遭った。しかし、そんな困難も乗り越え、戦後も着々と発展を続けてきた。

 小嶋総本店では、戦前より自社杜氏による造りを行っている。「一つ一つの工程を大切にしたい」という思いから、品質重視の酒造りにもいち早く転換してきた。「毎日飲んで飽きない酒、ほっとできる酒を造りたいと思っています」と小嶋社長。いわば普通の酒の質の向上を目指し、活性炭と醸造用糖類の削減を図るなどの取り組みを行ってきた。

 米沢は米どころとしても知られる。地場産の米、そして吾妻山系の湧水と、原料には事欠かない。米沢が味噌や醤油、漬物などでも知られるのもうなづける。

 そんな地元産の原料にこだわった純米吟醸「東光」は、きれが良く、後味もまろやか。さらに、厳寒仕込みの「純米吟醸「花一輪」は精米歩合50%、香りも良いうまみの酒。大吟醸「左きき」山田錦を高精白、長期低温発酵で造られた本格吟醸酒。香り、味、きれと調和のとれた酒だ。その他、長期熟成酒や季節限定酒なども多彩に揃う。冬のおすすめは、「白い酒 東光」。酵母が生きている活性にごり酒は、フレッシュな口当たりとさわやかなのど越しが楽しめる。

 「お客様の好みに合う酒というものを、常に考えていきたいですね。それには技術を磨くとともに、お客様のニーズを感知するアンテナを持つことも必要です」小嶋社長はまた、老舗の当主らしく、文化としての日本酒の持つ品格をも大切にしたいという。今後、日本酒は国外も視野に入れ、その魅力を広め、伝えていかなければならないと言う。

 城下町・米沢にどっしりと構え、常に地域の要となってきた小嶋総本店。そのまじめで前向きな酒造りの姿勢は、風格さえ感じさせる。

(左から)
・白い酒東光
・左きき
・花一輪
・純米吟醸「東光」

 小嶋酒造本店の歴史、そして酒造りの歴史を学ぶのであれば、米沢の観光名所の一つにもなっている「酒造資料館・東光の酒蔵」を訪ねるといい。飛騨の匠の手で江戸時代の造り酒屋の間取りを再現したもので、酒造りの道具から生活道具まで展示され、当時の空気まで感じられるような資料館である。

 福島県にとっても上杉家は縁のある家。景勝は米沢藩主となる前は会津百二十万石を治める大名だった。小嶋社長も「福島は距離的にも近く、さらに言葉や文化でも通じる部分が多いですね。もっとも身近な隣県という感じでしょうか」と親しみを込めて話してくださった。

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