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酒蔵探訪 41 2008年9月

「笹正宗」
 笹正宗酒造株式会社


喜多方市上三宮町上三宮字籬山675
Tel.0241-24-2211 / Fax.0241-23-1575
https://www.sasamasamune.com/

▲岩田恒典 社長

 喜多方市の願成寺にある阿弥陀如来は脇侍の観音菩薩、勢至菩薩とともに国の重要文化財に指定されている。高さ240cm、まさに「会津大仏」の名にふさわしい堂々たる座像である。

 その願成寺の近く、北に飯豊連峰を拝みその豊かな伏流水が絶えずわき出る、清酒づくりにはこの上ない場所に笹正宗酒造は門を構える。1818年、岩田善次兵衛喜長氏が創業、以来品質第一を貫き、 精良の品を正直に製造販売することを心がけてきたという。代々当主に秘伝の仕込みが伝授されたといい、四代目、五代目の時代には数多くの品評会で栄誉に輝いている。現在、代表取締役を務める岩田恒典氏で 七代目となるが、今日に至るまで過度の近代化、機械化、量産化を拒み、昔ながらの酒造りを続けている。

 その酒は現代に至っても高い評価を得ている。2003年から2004年にかけ全国、東北、福島と出品した観評会すべてで金賞受賞。その後も2006年、2007年全国で金賞受賞し、2008年3月、福島県の新酒鑑評会で純米・吟醸酒同時受賞、同年全国新酒鑑評会で金賞受賞、3年連続金賞受賞の蔵である。

▲蔵外観

 「わが国の日本酒販売のピークは、昭和50年頃でした。笹正宗酒造はそのわずか2年後の昭和52年から、純米酒の製造販売を開始しています。福島県ではもちろん初めて、全国でもきわめ て早い時期で、税務署の反対を押して始めたと聞いています。昭和54年6月の東京サミットの折に、当時のアメリカ大統領カーター氏が、六本木の『串八』で笹正宗の純米酒を飲み絶賛したこ とで、一躍有名になりました」と、岩田社長。笹正宗は「純米酒の蔵」として名を馳せることとなった。

 笹正宗ではまた、昭和61(1986)年に日本消費者連盟が認めた完全無農薬のみを原料とした純米酒「茜さす」を発売、これも新聞に大きく取り上げられ、全国に報道されたという。近年 は米の生産地を指定し、生産者と協力して安全で良い品種の無農薬・有機米を栽培。米、水、人情といった風土を活かした酒造りにつなげている。

 笹正宗では現在、依頼主の名前をラベルにしたオリジナルラベルに「名前の由来書」を付け、それが評判を呼んでいる。書道家が和紙に名前を筆耕した文字をラベルにし、漢字の由来を元にイメ ージした人物像を一言添えるのである。ラベル一枚一枚が手書き、桐箱入りの商品などもあり、ギフトや記念品にと好評である。

(左から)
・純米大吟醸
・本造り辛口 鬼涙
・純米酒
・オリジナルラベル 純米吟醸酒 スイングトップ栓
・名前の由来シート

 「単にお酒を売るだけでは大手のメーカーに席巻されてしまいます。生き残りをかけて飲み屋さんの屋号をラベルにすることを思い立ったのがきっかけでした」岩田社長は振り返る。その後、 毛筆で手書きにしたところ大きな反響があり、大手百貨店のお中元カタログにも掲載されました」しかし、あっという間に全国のメーカー、小売店などに模倣されてしまったそうで、特許を申 請していればと、周囲は残念がったという。その後社長は、笹正宗にしかできないことを、と名前の由来書を添えることを思いついた。これも大変評判となり、全国の蔵元で唯一、全日空の機 内誌にも紹介されるまでとなった。「お客様第一主義で、うまい酒を醸しながら、お客様に感謝・感激・感動を感じていただく商品づくりに取り組んでいきたいと思っています」

 190年もの歴史を刻んできた笹正宗。その長い歴史を経ても変わらぬ手作りの酒を提供し続けている。その確かな味とともに、お客様への感謝の心も提供する。それが笹正宗の酒造りである。

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