酒蔵探訪 51 2009年07月
「美酒爛漫」
秋田銘醸株式会社
秋田県湯沢市大工町4-23
Tel.0183‐73‐3161 / Fax.0183‐72‐3247
https://www.ranman.co.jp/
▲京野勉社長
宮城県と山形県に隣接する、秋田県最南東部に位置する湯沢市。稲庭うどんや漆器、温泉などで知られるここは、小野小町生誕の地として、その父母の舘跡や産湯だったという井戸跡が今に伝えられている。美人の誉れ高い小野小町。もとより秋田は美人が多いと言われる場所。そんな秋田美人をイメージする日本酒といえば、やはり「美酒爛漫」の名を挙げる人が多いのではないだろうか。吉永小百合から多岐川裕美、中江有里など、美人女優を起用し、美酒と美女を重ね合わせたコマーシャル。そして「爛漫」という華やかな名前が、艶やかな美女を連想させる。
「爛漫」を醸す秋田銘醸株式会社は大正11年、秋田県清酒を全国に売り出そうと県内の主な酒造家や政財界人などの有志が集まり設立された。酒どころ秋田の中でも最も酒造りに適した場所として、湯沢市が選ばれた。酒の名は当時は珍しい公募によって決定、「天真爛漫」「花爛漫」のイメージから名づけられたという。
▲本社玄関
▲雄勝蔵内部
秋田銘醸は創業当初より、品質の良さだけでなく安定した供給が大切だと考え、大量生産のできる企業としてスタート。酒造業が伝統的な家内工業であったこの時代、画期的なことだ。昔から秋田では寒冷地としての特徴を生かし、「秋田流寒造り」と呼ばれる低温で時間をかけて発酵させる造りが行われてきたが、秋田銘醸ではこの「秋田流寒造り」を「秋田流低温長期醸造法」として確立。品質へのこだわりも徹底してきた。創業3年目の大正11年には早くも全国清酒品評会で優等賞を受賞するなど、その〝美味〟はすぐに頭角を現し、さらに先に挙げた女優を使ったコマーシャル展開なども功を奏し、「美酒爛漫」は瞬く間に全国区の銘酒として知られるようになった。
現在、秋田銘醸には二つの蔵がある。コンピュータ管理のもとに完全に自動化された「御嶽蔵」。そして、昔ながらの手作りを中心とする「雄勝蔵」。伝統の技を守りつつ、近代科学の技術を加味することで「爛漫」ならではのふくよかできめの細かい、端麗な味わいが生まれる。 大吟醸や吟醸酒、古酒に季節限定商品など多彩な商品群の中で、やはり根強い人気を持っているのが普通酒。秋田ならではの寒造りが、飲み続けても飽きのこない〝通の酒〟を生む。1.8Lパックは、まさに毎日飲みたい酒だ。
また、湯沢に古くから伝わる郷土玩具「まなぐ凧」を名前に冠した「純米酒 まなぐ凧」は、米100%ならではの旨味とほどよい酸味、そして爽やかな香味も楽しめる。 純米酒では、JAS規格に則った契約栽培・有機米百%の安心、安全な有機純米酒「とびっきり自然な純米酒」も商品化し、話題を呼んでいる。 秋田銘醸はまた、得意分野である発酵技術や現在の設備を生かしながら新ジャンルへのチャレンジも進めている。
その一つが近年の健康志向に合わせて独自のこだわりで生んだ焼酎である。長期熟成焼酎 無彊爛漫」は、「爛漫」の酒粕を原料にした焼酎を2002年から長期間熟成したもの。熟成により、日本酒由来の香りと味が深みとまろやかさを増すという。「日本酒党の人が飲んでもおいしく飲める焼酎」として、人気を得ている。
また、清酒製造副産物の有効利用としては、降圧作用や精神安定、脂質代謝などに効果があるアミノ酸の一種「ギャバ」を添加したリキュール類や健康飲料の商品化を図り、さらに各種食品へ添加する食品素材としての提供も行っている。
(左から)
・長期熟成焼酎 無彊爛漫
・純米酒まなぐ凧
・爛漫美酒パック
「新しい飲酒層がなかなか開拓できない今、私たちはまずは、現在『爛漫』を飲んでくださっている方を大切にしていきたいと考えています」京野勉社長は言う。「それには酒質を変えない、むしろ酒質を上げていかなければなりません。そして、コストを下げる工夫をし、お客様に安心して飲んでいただきたい」〝美酒爛漫〟の味を守りつつ、さらに、健康志向や地産地消にも目を向け、〝爛漫ができること〟に挑戦していきたいと言う。
秋田の酒に寄せられる期待は大きい。その秋田の酒を代表するとも言える「爛漫」は、独自の酒を醸しつつ、秋田の伝統をも担い続けていると言えよう。
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