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酒蔵探訪 53 2009年09月

「そば焼酎 雲海」
 雲海酒造株式会社


宮崎市昭栄町45番地1
Tel.0985(23)7890
http://www.unkai.co.jp/

▲中島勝美社長

 今でこそ本格焼酎の原料は多彩で、全国各地で作られるようになっているが、昭和40年代までは鹿児島のいも焼酎、長崎の麦焼酎、沖縄の泡盛が主で、当時は本格焼酎は匂いがきつく、クセが強いと敬遠されていた。

 そんな昭和42年、宮崎県北部の五ヶ瀬町に、地元の造り酒屋を譲り受ける形で「五ヶ瀬酒造有限会社」が設立。当初は従業員7人、生産石高200石でのスタートだったという。麦を原料に作り始めたが、昭和45年にはとうきび焼酎を開発。これは「コーリャン(とうきび)の酒はうまかった」という知人の言葉をヒントに、高千穂で採れる良質のとうきびを使い、独自で開発したものだった。しかし、他メーカーの参入により、新たな焼酎を開発しようと研究が進められた。

 宮崎県北西部に位置する五ヶ瀬町は、昔から焼畑に「そば」を栽培してきた場所で、高冷地特有の香り高いそばは特産品として知られてきたという。昭和48年、そんなそばを使って生まれたのが、ほのかな甘い香りとまろやかな深みを持つ「そば焼酎 雲海」だった。

▲綾蔵の飛舞加乃門

▲櫂入れ作業

 五ヶ瀬町周辺にはまた、天岩戸伝説など、神代の昔から伝わる伝説も多い。九州統制の際に建磐龍命(たていわたつみのみこと)が国見をしたと伝えられる「国見ヶ丘」から見渡す神秘的な雲海こそが、その名前の由来となった。

 厳選したそば、そして米を原料に、4億3千万年前の地層を持つ地元の祇園山の岩清水を仕込み水に、手間と時間を惜しまずに作られるそば焼酎は、たちまち評判を呼ぶようになった。そば焼酎は、原料としてそばを採用しただけでなく、初めてオン・ザ・ロックという飲み方を提案して本格焼酎を楽しむ世界を広げた。1.8L瓶でなく、高級感を演出した黒角瓶(720ml)や一斗甕や陶器瓶の採用も、焼酎のイメージを変えた。

 そば焼酎は発売後数年で全国展開を図り、「雲海」はナショナルブランドに成長した。昭和53年には現在の五ヶ瀬工場を増設し、同時に社名を「雲海酒造株式会社」に変更した。

 現在、雲海酒造はこの「五ヶ瀬蔵」の他に、本格芋焼酎造りを行う「高岡蔵」や「出水蔵」、本格麦焼酎をはじめ本格焼酎文化を発信する「綾蔵」、日本一の収穫量を誇るそばの産地・北海道新得町の「北海道蔵」、さらに九州山地の懐にある「神々の里・貯ぞう蔵」を有する。それぞれにその地の自然の恵みを最大限に生かし、その蔵ならではの本格焼酎を醸し、育てている。

 そんな雲海酒造の本格焼酎は、国際的な酒の品評会2009モンドセレクションで、そば、麦、芋の長期貯蔵の五銘柄の本格焼酎が最高位の最高金賞を受賞している。これは弛まぬ研究開発と徹底した品質管理があってこそのものだ。本格焼酎に限らず地ビールやワインの研究、さらに焼酎粕の飼料化、廃液処理プラントの開発など、常に多岐にわたる努力が続けられている。

 また、綾蔵に隣接する「蔵元 綾 酒泉の杜」は、本格焼酎造りを見学できる他、伝統工芸の体験工房やギャラリー、温泉や宿泊施設、味どころも備えた美酒と美味の体験施設となっている。地元の味や技を楽しみながら、さらに本格焼酎の魅力も堪能できる。

 そば焼酎のパイオニアから、今や押しも押されぬナショナルブランドとなった「雲海」だが、原料や水、そして蔵を囲む自然など、〝ふるさと〟へのこだわりは強い。「本格焼酎を味わうことは、蔵と自然を味わうこと」と雲海酒造は言う。創業以来変わらぬ本格焼酎への思いこそが、「雲海」を生み、育て続けているのだ。

(左から)
・さつま木挽黒麹仕込み
・さつま木挽
・吉兆雲海
・そば雲海

・さつま木挽黒麹仕込み

黄金千貫を原料に、伝統の黒麹を使って仕込まれた。芋本来の自然な甘み、黒麹ならではのふくよかな香味とキレのある味わい。

・さつま木挽

厳選された鹿児島産の芋(黄金千貫)が原料。芋本来の自然な甘みと、コクのある深い味わいが特徴の本格芋焼酎。

・吉兆雲海

厳選されたそば、伝統的な黒麹、当社独自の酵母【日向灘黒潮酵母】で造り上げた。芳醇で甘みのある香味豊かな本格そば焼酎。

・そば雲海

30余年前に日本で初めて誕生したそば焼酎。厳選されたそばと九州山地の清冽な水で丁寧に仕込まれた深い味わい。

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