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酒蔵探訪 59 2010年3月

「さつま無双」
 さつま無双株式会社


鹿児島市七ツ島1丁目1番17
Tel.099-261-8555
https://www.satsumamusou.co.jp/

▲岩元則之社長

鹿児島といえば、西郷隆盛や島津斉彬、大久保利通など、幕末から明治維新の日本を動かした人物の名を思い浮かべる方も多いだろう。また、16世紀にキリスト教宣教師フランシスコ・ザビエルが上陸したのもこの地。鹿児島は、古くより大陸やヨーロッパ文化の門戸となってきた場所でもある。桜島や錦江湾といった、独特の自然もまた、鹿児島ならではのものであろう。

昭和41年、鹿児島の焼酎を日本に、そして世界に広めようと、鹿児島県酒造協同組合による鹿児島焼酎の統一銘柄として誕生したのが「さつま無双」である。「双(ふた)つと無い焼酎」という意味を持つこの名は、鹿児島県民に一般公募し、当時の県立図書館長、椋鳩十(むくはとじゅう)氏を選考委員長に選んだものだという。その後、昭和45年にはさつま無双株式会社に組織変更、東京や大阪に営業所を開設し、着々と発展を続けてきた。

また、昭和28年に設立した三和酒造株式会社が平成16年に事業提携で合意し、同社の酒類製造場をさつま無双の所在地に移転、甕壷仕込み・木桶蒸留にこだわった「無双蔵」が誕生した。

▲社屋外観

▲無双蔵

 「薩摩焼酎宣言」と題した文書がある。平成19年に鹿児島県酒造組合連合会が作ったもので、ワインのボルドー、シャンパーニュ、ウイスキーのスコッチ、バーボンなどと同様に、薩摩焼酎がWTO世界貿易機関のトリプス協走に基づく産地指定を受けたことから、改めて「薩摩焼酎」のさらなる発展と向上を目指すことを謳ったもの。鹿児島産のさつまいもと水にこだわり、鹿児島県内で製造された本格焼酎のみに「薩摩」を冠し、品質の証しとすることや、その品質向上や郷土の自然環境保護を目指すことなど七項目の宣言がなされている。

 さつま無双でも原料となるさつまいもの選別には気を配る。栗小金や紫芋の種子島ゴールドといった希少種も用い、風味豊かな焼酎を醸す。また、割り水は地元・下田の地下を流れる湧水「下田・七窪湧水」を使用。ピュアな良水はすべての酒に使われ、その飲み飽きしない味わいに寄与している。

 さらに環境や気候などによっても変わる焼酎の味を最大限に引き出すべく、その製造法にも強いこだわりを見せる。最新の設備の中安全でおいしい焼酎を製造することを基本に、タンクとは別に「甕」で貯蔵しコクと旨みを引き出す。また、木樽の香りを焼酎に添える「貯蔵樽」、杉の木を用いた「木桶蒸留器」等、さまざまな設備が個性豊かな焼酎を生み出す。

 そんなさつま無双の焼酎は、「ダレヤメ(鹿児島地方の方言で毎日の晩酌のこと)」のお供から贈答にもおすすめのものまで幅広い。いわゆるスタンダードないも焼酎である「さつま無双赤ラベル」は、まさにさつまいもの風味もしっかり味わえる薩摩焼酎。黒麹で仕込んだ「さつま無双黒ラベル」は甘み、コク、キレのバランスが良く、食中酒としてさまざまな料理との相性もいい。一次仕込み、二次仕込みともに土中に埋めた甕壷で行い、発酵を終えたもろみを木桶蒸留器で蒸留する「甕つぼ仕込み」は芳醇な香り、旨みが味わえる、お湯割りがおすすめ。つわぶきの葉がデザインされた独特のラベルも人気の「つわぶき紋次郎」は、黒麹焼酎の中でも特にまろやかな旨みが引き出されている。華やかな香りの冷用タイプの焼酎「酔彩」とともに、さつま無双自慢の逸品。

(左から)
・つわぶき 紋次郎
・酔彩(すいさい)
・甕つぼ仕込み
・さつま無双 黒ラベル
・さつま無双 赤ラベル

 さつま無双、そして薩摩焼酎の魅力をより知りたいなら、ぜひ一度、無双蔵を訪ねてほしい。薩摩焼酎の製造過程を見学できる上、さつま無双及び鹿児島県内の各蔵元の160種を超える焼酎を購入することもできる。囲炉裏と畳の椅子が設けられた売店では試飲も可能なので、ここでじっくりと薩摩焼酎を試してみてはいかがだろうか。

 さつま無双の社訓には、「報恩感謝」「礼節」「誠実奉仕」「創造開発」「和心協調」などの精神が掲げられている。これは焼酎に限らず、もの造りを手がけるものの基本となるものだろう。そんな基本に則りながら、薩摩という地に根ざした文化とも言える焼酎に誇りを持ち、さらなる向上を目指す。「双つと無い」。それはさつま無双の焼酎そのものでもあり、それを造る造り手の技や心でもあるのだ。

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