酒蔵探訪 61 2010年5月
「宝焼酎」「松竹梅」
宝酒造株式会社
京都市下京区四条通烏丸東入長鉾町20
Tel.075‐241‐5110
https://www.takarashuzo.co.jp/
▲大宮久社長
2002年に誕生した純粋持株会社「宝ホールデイングス株式会社」の中核企業として、酒類、調味料、酒精、海外事業の4つの事業を展開している宝酒造株式会社。その歴史は1842年、天保時代に幕を開ける。京都でみりんや焼酎を製造する中、大正5年には新式焼酎や新式みりんの製造も開始、関東大震災の際には東京に寶みりんや寶焼酎を供給したとの記録も残されている。その後、大正14年に寶酒造株式会社を創立し、さらに昭和8年には松竹梅酒造株式会社も設立、清酒「松竹梅」はこの年に発売を開始した。
酒造業界にあって常に先駆的な取り組みを行ってきた宝酒造だが、それは酒造りに限ったことではない。昭和29年には料理番組の先駆けと言える「タカラお料理手帳」という番組の放送を開始。 また、全国各地で料理講習会も実施し、世間に反響を呼んだ。昭和35年に完成した伏見のみりん工場ではしゃれた小型のボトル容器のみりんを製造し、「化粧びん」の愛称でモダンなライフスタイルの象徴として人気を得たという。江戸時代に生まれた「タカラ本みりん」は、本みりんのトップブランドとして、時代の変化に対応しながら常に日本の台所に欠かせない存在となっている。それはこんな積極的な取り組みと提案に寄与する部分も大きいと言えよう。
▲白壁蔵外観
宝酒造といえば、焼酎を思い浮かべる方も多いだろう。甲類では、発売以来30年以上のロングセラーを続ける〝宝焼酎「純」〟をはじめとする伝統の〝宝焼酎〟ブランドでトップシエアを堅持している。また、芋100%にこだわった〝全量芋焼酎「一刻者(いっこもん)」〟や、麦本来の味わいを追求した〝本格麦焼酎「知心剣(しらしんけん)」〟など、さまざまな原料を用いたこだわりの焼酎も発売するなど、本格焼酎市場でもその地位を確かなものにしている。
一方、〝松竹梅〟は慶祝・贈答市場での人気は衰えることがなく、また、ソフトパック市場でも〝松竹梅「天」〟が高い支持を得ている。特定名称酒では伝統的な手造りりの原理を再現した最新鋭の設備と、人の手による酒造りの両方を併せ持つ灘の「白壁蔵」を中心に製造。〝松竹梅「白壁蔵」〈生?純米〉〟など、高品質で個性的な商品が生まれている。
この「白壁蔵」は、平成13年に完成した。昭和29年から操業してきた灘工場の改築は、〝本当に旨くてよい酒とは何か〟、そんな酒造りの初心に戻り、それを具現化するために始まった。たくさんの技術者や杜氏の意見も取り入れ、たとえば昔の和釜の原理を再現した連続式蒸米機、最適な温度と湿度が厳密に管理される自動製麹機などが開発、導入されている。
(左から)
・ブラントン
・紹興酒
・白壁蔵
・一刻者
・知心剣
・宝焼酎
さて、今でこそ数え切れないほどの缶入りチューハイが店頭に並ぶが、日本初の缶入りチューハイは昭和59年、宝酒造から生まれた〝タカラcanチューハイ〟である。厳選された焼酎、果汁、水と確かな技術に裏づけされたこだわりの品質は、発売以来変わらぬ人気を博している。「ストレート混濁果汁」を使用した「直搾り」や「焼酎ハイボール」など、こちらも時代に合わせた商品開発が続けられている。
宝酒造では輸入酒もまた、個性的な商品を多彩にそろえている。たとえば〝紹興酒「塔牌(とうはい)」〟やシングルバレルバーボンの〝ブラントン〟など、嗜好や飲用シーンにふさわしい酒を世界中から提案している。
「これからもさらに便利で豊かになっていく私たちの生活環境において、常に新しい時代の飲食や食文化のスタイルを見つめ続け、消費者視点での新しいスタンダードを提案していきたい」とは、大宮久取締役社長の言葉である。常に時代の変化をとらえ、そこに生まれるニーズを先取りし、答えていく。そして、そこにはまた、古き良き伝統も生き続けているのだ。
宝酒造はまた、安全・安心を考えた品質マネジメントや社会貢献活動、環境活動といった取り組みも積極的に行っている。次世代を担う子ども達に自然の大切さを伝えることを目的に開催される「TaKaRa田んぼの学校」や自然保護活動を支援する「TaKaRaハーモニストファンド」、焼酎の量り売り、容器の軽量化など、実に多方面での活動が続けられている。
創業以来、独創的で時代に合った商品開発、提供を続けてきた宝酒造。その姿勢は変わることなく、さらに柔軟さも併せ持ちながら、今後も進化していくに違いない。
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