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酒蔵探訪 63 2010年7月

「黄桜」 黄桜株式会社


京都市伏見区塩屋町223番地
Tel.075-611-4101
https://kizakura.co.jp/

▲杜氏 高倉敏夫氏

 江戸時代には「伏水」と記されたほど、昔から水が豊かな京都伏見。そんな京都盆地の南部に「黄桜」の三栖蔵がある。黄桜の社名の由来は、「ウコン桜」と呼ばれる淡い黄味かかった花をつけ、清楚な印象の「黄桜」を好んだ創業者が名づけた。

 黄桜は大正14(1925)年、京都伏見に松本治六郎商店として創業した。昭和26(1951)年には株式会社を設立し、昭和39(1964)年に黄桜酒造株式会社に名称を変更、さらに平成18(2004)年に黄桜株式会社に変更し現在に至る。  また京都の本社・工場の他に、全国に支店・営業所を構え、京都市内には趣の異なる三つの直営店がある。

 黄桜といえば、「カッパ」のCMを思い浮かべる方も多いだろう。漫画家・小島功氏が描くカッパや「カッパッパー・・・」と軽快なCMソングもまた、黄桜の知名度に大きく貢献してきた。ちなみにこのカッパ、CMでは夫婦で登場しているイメージが強いが、ホームページを見ると、長女、長男、そして祖父と五人家族であることがわかる。そんな遊び心も楽しい。

▲本社工場全景

▲直営店 黄桜カッパカントリー

 名水百選にも選定されている伏水を使い、日本三大酒処に数えられる京都。この地における酒造りの歴史は、稲作の始まった弥生時代からとも言われている。黄桜はそんな伝統的な京都にあって常に日本酒文化の継承と発展に努めてきた。伏見の酒はきめ細かいまろやかな口当たりと、淡麗な風味が特長である。黄桜では酒質のさらなる向上を目指し、吟味を重ねた酒造好適米によって自然の恵みを充分に生かした美酒を追究している。

 黄桜では先進の設備、コンピュータにより近代化された工場内においても、杜氏の卓越した伝承の技が冴えわたる。「雅な味わい」と称される黄桜の清酒は、杜氏を頂点とした人と技術の調和の中で熟成され、三栖蔵出品の酒は、全国新酒鑑評会において八年連続で金賞を受賞している。

 そんな黄桜の代表選手は「辛口一献」だろうか。清酒酵母の発酵を高める五段仕込みを採用した、切れのある辛口である。黄桜独自の酵母を使用することで、旨みと幅のある味わいが実現している。

 また、「純米 辛口一献」は、福井県産コシヒカリを100%使用した華やかな香りの酒。伏水や吟醸酵母を用いるなど、純米ならではの旨さが際立つ酒だ。また黄桜では、時代のニーズに対応した製品づくりも積極的に行う。女性や若い世代をターゲットに、新たな市場に向けた新感覚の日本酒などである。その一つが「日本酒ハイボール」だ。スパークリング日本酒の新定番として、日本酒ビギナーにも親しみやすい。ジュワッと広がる発泡感とほのかな日本酒の香りが爽やかで、夏にもぴったり。そして、清酒以外にも非アルコール飲料や化粧品、食品関連など、さまざまな生活シーンに対応できるラインナップの充実も、今後の黄桜の目指すところである。

(左から)
・日本酒ハイボール
・純米 辛口一献
・辛口一献

 また、黄桜のスローガンである、「くつろぎ、うるおい、かがやく」は「心のくつろぎ」「美のうるおい」「味のかがやき」を表している。

 それはお客様が〝より豊かにかがやく暮らし〟を理想と考える、黄桜が追究する未来像でもある。

 黄桜はこれまでの歴史を「三度生まれ変わった」と称している。「第一の創業」は、もちろん大正14年の創業だ。カッパを企業キャラクターとしてテレビCMを展開、さらに東京を重点エリアとして一挙に業界内の地歩を固めた「第二の創業」期。そして、日本酒事業を柱に新事業領域を開拓する「第三の創業」を果たすことこそ、これから目指す先の黄桜である。

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