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酒蔵探訪 77 2011年9月

「豊後の里」 藤居酒造株式会社


大分県臼杵市野津町大字野津市213-2
Tel.0974-32-2008
http://www.fujii-shuzo.com/

▲藤居新太郎社長

 大分県東南部に位置する臼杵市。「臼杵」の地名は、市内にある臼塚古墳の入り口に立つ石の像「石甲」が、臼と杵の形に似ていることから「うすきね様」と呼ばれて親しまれてきたことに因ると言われる。「石甲」は、平安時代から室町時代に彫られたといわれる「国宝臼杵磨崖仏」とともに国宝に指定されている。また、阿蘇山の火山灰が固まってできた凝灰岩の丘「二王座」は、武家屋敷や古寺が並ぶ趣ある景観で知られる。

 臼杵ではその気候や資源を生かし農業や漁業が行われてきたが、江戸末期からは醤油や味噌を中心とした醸造業が盛んで、その規模は西日本一の規模を誇る。かつて「豊後」と呼ばれたこの場所は、文字通り豊かな自然と人の技に恵まれたところである。

▲蔵元外観

 藤居酒造は臼杵市野津町、平成16年度全国一級河川水質調査で日本一の1つとなった大野川の上流域の町に、明治5年、「万力屋」の屋号で創業した。大正8年には現在地に製造場を移転しているが、当時の蔵は「明治蔵」「大正蔵」として今も健在で、さらに「昭和蔵」、そして平成8年に建てられた新工場や平成13年に完成した「洞窟貯蔵庫」とともに麦焼酎や米焼酎、芋焼酎、そして清酒を製造、貯蔵している。

 古い蔵を大切にする一方で、藤居酒造は九州ではいち早くISO14001を取得。水の浄化や汚泥の再利用などにも積極的に取り組んでいる他、OCCPオーガニック認証を取得するなど、環境や材料の安全、品質へのこだわりを窺わせる。

 藤居酒造を代表する商品の一つ「豊後の里」は、先に紹介した大野川上流域の清冽な水で仕込まれている。フルーティーで芳醇な香り、そして優しいのど越しが特長だ。陶器のボトルも良い雰囲気。

 昔ながらの「常圧蒸留法」で作られているのが「ふしぎ屋」。現在主流となっている「減圧蒸留法」に比べ、原料の味や香りが濃く残るということで見直されているという。「ふしぎ屋」は、この「常圧蒸留法」で作った焼酎を「氷点ろ過」でろ過し、旨み成分を残しながらスッキリとした味わいに仕上げている。

(左から)
・特選 豊後の里
・豊後の里 陶器
・時の旅人 長期貯蔵酒セット
・麦焼酎 ふしぎ屋25度
・龍梅 大吟醸酒

 他にも麦焼酎では、「仙洞」や「萬力屋」、「時の旅人」など、いずれも特長ある多彩な銘柄が揃う。

 米焼酎「ぶんご」は、清酒と同じ仕込み方法、黄麹、低温、三段仕込みで行い、米の持つ旨みを追求。吟醸香や原料の旨みが存分に楽しめる。10年もの、20年ものと、時を経てこそ生まれる味わいもぜひ味わってみたい。

 いも焼酎「のみちょれ」は、鹿児島県産の黄金千貫と黒麹でじっくり仕込まれている。日本一美しいといわれる「風連鍾乳洞」に連なる洞窟内の甕で貯蔵することで、柔らかな飲み口が生まれるという。

 そして、清酒もまた品質を第一に、原料にこだわり丁寧に仕込む。大吟醸「龍梅」は山田錦を原料に、地元の山中の軟水「久保ん谷湧水」で仕込む。全国清酒鑑評会での連続金賞受賞を誇る杜氏自慢の逸品だ。

 「和醸良酒」を信条に、藤居酒造は酒造りを続ける。自然に恵まれた大分の地で伝統を大切に、そして環境にも配慮しながら良質の酒を醸す。「豊後」ならではの酒蔵である。

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