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新・酒蔵探訪 13 2012年12月

ほまれ酒造株式会社


喜多方市松山町村松常盤町2706
Tel.0241-22-5151
https://www.aizuhomare.jp/

▲唐橋裕幸社長

 会津を、福島を代表する酒蔵の1つである「ほまれ酒造」。東日本大震災から半年を経た昨年9月、唐橋裕幸氏が4代目社長に就任した。裕幸氏は8年ほど前に入社以来、徐々に後継者としての体制づくりと心構えをしてきたそうで、特に近年は喜多方商工会議所の会頭や酒造協同組合の理事長などを務め、多忙だった唐橋幸市郎前社長に代わり、業務に当たってきた。「特に社長に就任したからといって、何かを変える、何かを始めるということはありませんでした」と、裕幸氏は話す。

 幸い、東日本大震災ではほとんど被害がなかったそうで、ほまれ酒造の酒造りは震災の前後で何一つ変わることなく、淡々と続けられている。もちろん、水や米、商品などすべての段階で細かな検査を行い、安全性の確認とアピールを行なっている。しかし、やはり原発事故の影響は免れることはできず、特に海外に出荷していた部分では大きなダメージを受けた。出荷ストップや検査の厳格化などにより、事故以来1年半を経た今も輸出量半減以下という国もあるという。

▲蔵外観

▲雲嶺庵

 今、ほまれ酒造がめざしているのは、ブランドイメージの再構築だ。「現在、7割以上がレギュラー酒、特定名称酒は3割程度という状況の中で、ほまれ酒造が個性も魅力も豊かな酒蔵であることを訴えていきたいと思っています」と、裕幸氏。そのためにも、品質の向上を追及し続けている。新たな冷蔵設備の導入やタンクの増強、そして製造ラインの見直しも進めている。また、造りにおいては仕込みを小型化し、新たな付加価値商品を数多く送り出せるフレッシュローテーションシステムの実現に取り組んでいる。

 ほまれ酒造の酒は、東北及び全国新酒鑑評会で毎年のように金賞を受賞するなど高い評価を得ているが、今年は「播州産山田錦仕込 純米大吟醸酒」がIWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)でシルバーメダルに輝いた。海外で評価されることで、逆に日本での評価も高まる、それも戦略の一つだ。

 2013年のNHK大河ドラマ「八重の桜」には、福島復興のきっかけとして県内外から大きな期待が寄せられているが、ほまれ酒造では番組の公式タイトルロゴを用いた「ならぬことはならぬものです 純米原酒 八重の桜限定カートン」を発売、話題となっている。端麗辛口ながら原酒の深みと丸みのあるバランスの良い酒で、きっとドラマとともに人気を博すことだろう。

 さらに、リキュール類などでも注目の商品が登場している。「苺にごり酒」は、にごり酒のまろやかな味わいとイチゴの爽やかな酸味、甘味が見事にマッチした新感覚のリキュール。ロックやソーダ割り、牛乳割りもおすすめだという。

 ブランドイメージの再構築の一環として、より多くの人に蔵を訪ねてほしいと裕幸氏は言う。「直接蔵に来て、蔵の雰囲気を感じて、ほまれ酒造がこういうところで、こういう酒造りをしているということを知っていただきたいと思っています」。蔵の敷地内には1300坪もの広さを持つ日本庭園「雲嶺庵」がある。ケヤキ、モミジ、桜などが四季折々に風情ある景色を見せてくれるこの庭園には、蔵の見学も兼ねて立ち寄る観光客も多い。  

(左から)
・播州産山田錦仕込 純米大吟醸酒
・ならぬことはならぬものです 純米原酒
 八重の桜限定カートン
・苺にごり酒

 「安らぎと喜び、そして感動を与えるものづくり」。これはほまれ酒造の社是だ。「酒というのは気心の知れた友人と語り、あるいは疲れを癒しリラックスする。そんな時に飲むものです。それに加えて感動を与える、そんな存在でありたいという思いを込めました。また、敢えて〝ものづくり〟としたのは、今後は酒だけでなく酒に関連した商品にも積極的に取り組んでいきたいと考えているからです」。創業以来伝統を守りながら、常に新しい取り組みも積極的に行なってきたほまれ酒造。これからも福島の酒を牽引してくれるに違いない。

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