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新・酒蔵探訪 14 2013年1月

奥の松酒造株式会社


二本松市長命69番地
Tel.0243-22-2153
http://www.okunomatsu.co.jp/

▲遊佐丈治社長

 創業享保元年(1716年)。3年後の2016年には創業300年の節目を迎える。「実はこの享保元年の創業というのは、はっきりわかっている部分での話なので、実際にはもっと以前から酒づくりを始めていたのかもしれません」。そう話すのは19代当主である遊佐丈治社長だ。遊佐家はもともとは武士だったそうで、江戸時代に入ってから「油屋」の屋号で菜種油屋となり、さらに味噌や醤油、そして酒造りを手がけるようになったという。戦国時代より遊佐家は、二本松の歴史と文化を築いてきたと言えよう。

 そんな伝統ある蔵では、長年継承されてきた技とともに、最新の技術やマーケティングを駆使し、ブランドロイヤリティの向上を図ってきた。歴代の杜氏が伝承した越後流、南部流の技。酒造りに理想的といわれる安達太良山の伏流水。そして厳選した米。豊かな自然と恵まれた風土の中、多彩な商品が生まれ、高い評価を得てきた。

▲会社正面

 東日本大震災のダメージは決して小さなものではなかった。「商品にはそれほど大きな被害はありませんでしたが、建物や製造ラインに被害を受けました」。修復しようにも資材不足などからなかなか修理もままならなかった。さらに流通がストップし、そこに原発事故も起こり、海外への輸出や風評被害の問題も続いた。「何もできない状況だった」と、社長は震災後を振り返る。 しかし、奥の松の酒造りは淡々と、以前と変わらぬまま続けられている。放射線に対する検査は徹底して行い、原料米はもちろん仕込み水、米糠、酒粕、そして商品全量まで行なっている。今季の造りも、米の確保も早手回しで行い、例年通りに始まった。

 レギュラー品から純米、吟醸、大吟醸、季節の限定品、さらにリキュール、本格焼酎など幅広いラインナップが揃う奥の松の酒。「どの商品もすべて、全力投球で造っています」。そこには蔵人の熟練した技と洗練された設備、そして安心・安全へのこだわりが貫かれている。

 歴代当主の名を冠した「大吟醸雫酒 十八代伊兵衛」は、酒袋から滴る雫だけを集めた酒。大吟醸ならではの繊細さと芳醇な香りが味わえる。平成23酒造年度全国新酒鑑評会で4年連続金賞を受賞している。

 一方、2012年6月に愛媛県で行なわれた「梅酒2012全国制覇利き酒大会」では、人気の「とろシリーズ」の「うめとろ」が、全国61蔵、123種類の梅酒の中から第1位に輝いた。とろりとしたうまさと絶妙の梅の酸味はそのまま冷やして、あるいは好みのジュースや炭酸で割ってもおすすめ。姉妹品の「ももとろ」、「ゆずとろ」とともに、最近の人気商品だという。

 瓶内で二次発酵させた「純米大吟醸 プレミアムスパークリング」は、純米大吟醸の贅沢な香りと味わいそのままのスパークリング日本酒。勝利の美酒としてバイクのロードレースなどの表彰式を盛り上げている。さらに、「純米吟醸かめぐち番」は、しぼったままの本生をオリ引きせずに瓶詰め。1月発売の限定品として今年も登場した人気商品だ。  

(左から)
大吟醸雫酒 十八代伊兵衛
純米大吟醸 プレミアムスパークリング
純米吟醸 かめぐち番
うめとろ/ももとろ/ゆずとろ

 奥の松酒造では、震災以前に毎年行なっていたお客様感謝デーを昨年11月に2年ぶりに開催した他、全国各地で広く「奥の松」に触れる機会を設けている。また、蔵内にある「酒蔵ギャラリー」は、お客様と「奥の松」を結ぶ空間。さまざまな酒を試飲できる他、酒造りの工程を解説したビデオ上映やパネル展示、奥の松オリジナルグッズの販売なども行なっている。
(営業時間10時~17時)

 創業300年に向けては、現在企画中とのこと。「奥州・二本松市」。南北朝時代より続く伝統の酒蔵、奥の松はこれまでも、そしてこれからも粛々と技の限りを尽くした酒を醸し続ける。 

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