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新・酒蔵探訪 27 2014年3月

宮泉銘醸株式会社


会津若松市東栄町8-7
Tel.0242-27-0031
http://www.miyaizumi.co.jp/

▲蔵外観

会津若松市東栄町。鶴ヶ城を間近に見るこの場所は甲賀町と呼ばれ、かつては家老級の武家屋敷が立ち並んでいたという。宮泉銘醸の蔵も、白虎隊寄合二番隊長、一ノ瀬加寿馬邸跡に建つ。一帯は西軍による砲撃で焼失したそうで、蔵の前の通りで降伏式が行なわれたという案内もあった。

宮泉銘醸は、「観光と醸造の共存する酒蔵」として観光客を受け入れてきた。「會津酒造歴史館」も併設。会津若松の蔵で蔵を開放したのは、宮泉銘醸が最も早かったという。「うちのような小さな蔵では、かつては大きな蔵の下請けが中心だったのですが、醸造技術の進歩で自社で生産する蔵が増え、下請けは必要なくなってきたのです。そこで、観光地・会津の酒蔵として観光との共存を考えたのです」現社長、宮森義弘氏は、当時の経緯を話す。しかし、他の酒蔵も見学客を受け入れるようになり、また観光客自体も徐々に減るなどして、蔵の経営は再び悪化していったという。

▲宮森義弘社長

先代は会社の再建を義弘氏に託した。「蔵に戻る前に県内の先輩の酒を東京で飲み、こんなに美味しい酒があるのかと衝撃を受け、自分もこんな酒を造ってみたい」。3年間、県の清酒アカデミーで酒造りを勉強し、新しい酒造りに取り組んだ義弘氏。酒造りの工程の一つひとつについて見直しを図ってきたという。

たとえば自慢の名水を、ここではさらに数回濾過して酒造りに用いる。また、米は会津若松市内や会津美里町などで契約栽培を行なう。その県内産の米を柱に、新しい米の導入にもチャレンジしているという。「震災後、県内産の米の不足などもありましたし、そもそも県内で生産していない酒米もあります。そして、新しい米での造りは、その米の特徴を見極めながら行なわなければならず、自ずと技術力が磨かれます」。毎年新しい品種の米での造りに取り組み、技術力とともに酒質の向上も目指しているという。

「細部まで精度の高い酒造りを目指す」。研ぎ澄まされた酒は、徐々に評判を呼ぶ。代表銘柄でもある「會津宮泉」も、レギュラー酒をはじめ、純米酒や大吟醸、純米大吟醸、純米吟醸など、全て見直した。また、平成19年に引き継いだ「冩樂」はゼロからスタートし再設計し、米の個性を生かした純米酒、純米吟醸など、全国でのファンを増やしている。

(左)會津宮泉 大吟醸
(右)寫樂 純米吟醸 備前雄町

東日本大震災の直接の被害は少なかったという。「経済のマヒや、飲食店などで需要を控える動きがあったり、若干影響はありましたが、うちでは小さな酒屋さんとの取引が多く、むしろ東北の酒を応援してくださった方も多く、大変力になりました」と、社長は振り返る。

2月中旬、福島県内は中通りを中心に大雪に見舞われた。取材に伺ったのは大雪の数日後だったが、会津は意外にもそれほどの降雪はなく、この日も駐車場には観光バスが停められ、趣ある蔵をカメラに収める観光客で賑わっていた。しかし、「まずは酒造り」と社長。現状に甘んじることなく、常に上を目指す。歴史ある町で、次代を見据えた酒造りが続けられている。

※「冩樂」は出荷数に限りがあり、販売店での取り扱いも限定されています。ご了承ください。

※掲載されている情報は取材日時点での情報であり、掲載情報と現在の情報が異なる場合がございます。予めご了承下さい。