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新・酒蔵探訪 28 2014年4月

合資会社 辰泉酒造


会津若松市上町5-26
Tel.0242-22-0545
https://www.tatsuizumi.com/

▲蔵外観

 会津若松市の中心部に煙突の立つ白壁の蔵が、創業当時の面影を残す辰泉酒造。明治10年創業の酒蔵は2009年、4代目となる新城壯一氏が代表に就任した。そして、2011年春からは、30年以上造りを担ってきた晴山杜氏の引退に伴い壯一氏が蔵元杜氏となり、地元出身の蔵人とともに酒造りに取り組んでいる。

 「杜氏の頃と、造りの基本は変わっていません。ただ、以前より貯蔵や酒質管理の部分に力を入れ、出荷のタイミングを考えるようになりました。また、酒を造ることと売ることを同じ人間がやることで、年間を通した品質管理や計画的な造りも可能になりました」。さらに商品も見直し、同じような酒質の酒は整理し、一方で季節ごとの商品を増やすなど、より個性のあるラインナップを目指しているという。

 辰泉酒造では、以前から米にこだわった酒を提供してきた。代表銘柄の1つでもある「京の華」は、大正時代に山形県庄内地方で生まれ会津地方でも栽培された酒米「京の華」で醸される。会津に合った酒米といわれたものの、栽培が難しく生産性も低かったため徐々に姿を消したという。その酒米の復活に尽力したのが先代、新次氏だった。3年をかけてようやく酒を造れるだけの収穫量を栽培し、杜氏とともにいかに「京の華」ならではの酒を実現するかに苦労を重ねた。今も、酒米「京の華」は地元で契約栽培を行なっている。

▲新城壯一氏

 この「京の華」だけでなく、辰泉酒造の酒は、その9割が地元の米で造られている。「震災前から、農家は苦しい立場に立たされていました。同じ地元として支え合うことができればと、地元で調達できるものは地元で、と思っています」。今後栽培農家を増やしていくことを考えているという。

 「純米大吟醸 京の華」は、フルーティな香りとじわっと広がる独特な味わいが特長だ。また、コシヒカリを使った「純米 会津流(あいづながれ)」はやや辛口ながら米の旨みが広がる通好みの味わい。さらに、「夢の香」100%使用の「特別純米 辰泉 夢の香」は、甘辛のバランスが絶妙。いずれも米の個性を引き出した自慢の酒ばかり。飲む人を思いながら、手と目の届く小仕込みの造りならではのものだ。2011年3月、引退を間近にした杜氏の最後の造りも終盤を迎えた中、東日本大震災が起きた。蔵の土壁が崩落し、タンクから酒がこぼれたり、商品が割れるなどの被害があった。「それでもたまたま11日に燃料を補充しておりましたので、数日後には火入れ作業なども行なうことができました。物流が途絶えた3月はなかなか出荷できませんでしたが、4月には復興支援などもあってだいぶ持ち直しました」と、壯一氏。

 鶴ヶ城に桜を見に来た観光客がお土産にと購入したり、遠方の小売店も被災地支援でイベントを行なうなどしてくれた。もちろん、東京などで県や酒造組合などが行なうイベントには、蔵元自らが積極的に参加した。「そんなイベントを通して、会津だけでなく県内の酒蔵の結束は強くなったように思いますね」。

(左から)
純米大吟醸 京の華
純米 会津流
特別純米 辰泉 夢の香

 また、復興支援は、新たな顧客も生んだという。「イベントで買ってくださった方が会津の酒を初めて飲んで、おいしいからとまた買ってくださる。そんなリピーターが増えたのは嬉しいことです」。震災前に比べ、首都圏など県外の顧客の割合が増えているという。

 「未だに福島県の酒に不安を感じている方もいらっしゃると思います。そんな不安を払拭するためにも、私達は積極的にPRしていかなければならないと思っています」と、壯一氏。今後は県外、そして海外も視野に入れ、会津の酒、福島の酒の魅力を広く伝えていきたいと話してくれた。

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