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新・酒蔵探訪 33 2014年9月

会津酒造株式会社


南会津郡南会津町永田字穴沢603
Tel.0241-62-0012
https://www.kinmon.aizu.or.jp/

▲渡部景大専務

 旧南会津郡田島町(現在の南会津町)は豊かな自然と、その自然と先人が育んできた歴史と文化が残る場所。駒止湿原や七ヶ岳、田島祇園祭など、多彩な観光地や伝統の祭りが多くの観光客を誘う。そんな地に、元禄年間に創業したのが会津酒造株式会社だ。「はっきり何年創業というのはわからないのですが、近くで味噌や醤油を作っていた本家から、最初はこの場所に通って酒造りを始めたようです」と話すのは、9代目となる渡部景大専務。4年前より蔵に入った。

 「金紋会津」の名を知る人も多いだろう。創業以来「会津正宗」などさまざまな銘柄を出してきたそうで、現在は昔ながらの普通酒のみに「金紋会津」の名を残し、レギュラー酒は「会津」銘柄に統一を図った。また、「山の井」銘柄は、専務が独自のコンセプトで醸す少量の酒に冠しているという。

▲蔵外観

 「山の井」という名も古くから使ってきた名前だそうだが、山の井とは文字通り山中の湧き水を指す。この蔵は創業以来、敷地内の地中から汲む水に大きな特長がある。ミネラル分が極端に少ない軟水で、口当たりよくすーっと入っていく水だという。その水で仕込む酒もまた、きれいななめらかな酒になると渡部専務。「この水を生かした酒造りを目指しています。米も南会津産を中心に使っていますが、夢の香などは他のどこで作った米よりも南会津産は良い米だと思います」。

 蔵は、江戸時代に建てられた建物に明治や昭和に建て増ししてきたそうで、東日本大震災で壁にひびが入るなどの被害はあったそうだが、健在である。「酒蔵にはそれぞれクセがあると思います。ここは何と言っても寒いんです。氷点下20℃にもなることがあり、蔵の中でも当然氷点下という日が少なくありません。他の蔵では温度管理といえば酒が温まらないようにすることが多いと思いますが、うちでは逆に冷えすぎないように気をつけなければなりません。また、発酵でも酵母がより活発になるように温度に気をつけます」。作りにおいても、専務はさまざまな試行錯誤を重ねているところだという。「昔ながらの作りの良いところは残しつつ、新しい技術も取り入れながらやっていきたいと思っています」。たとえば酒を絞るのも昔ながらの槽(ふね)と薮田式の機械の両方を使い分ける。また、いかに寒い土地とはいえ、貯蔵用の冷蔵設備も用いる。蔵を訪ねた8月、次の作りに向けて機械や設備の点検や手入れが行なわれていた。

▲大吟醸「田島」/純米大吟醸「会津」

 「会津」に統一した銘柄の中で、大吟醸には「田島」の名が付けられている。町村合併により蔵の住所から消えた町の名を残したという。フルーティな香りがたち、甘みもしっかりしていながらスッキリとした味わいの酒だ。また、純米大吟醸「会津」は穏やかな香りで、自慢の米の旨みが感じられる酒。他ににごりや梅酒、ゆず酒などもおすすめだ。

 「日本酒は食べ物と合わせる酒。日本酒がそこにあることで、会話も弾み、食事が楽しくなる。そんな酒を目指しています」。自己主張が強すぎることなく、料理と平等な関係でありたいという。そして、あくまでも地元に根ざした酒蔵であることを目指す。「県内外のたくさんの方に南会津に来ていただきたい。自然や観光やたくさんの魅力がある南会津で、日本酒もまた南会津の魅力の1つでありたいと思っています」。まだまだいろんなことを勉強し、研究している段階だという渡部専務。しっかりと前を向く9代目に期待の声も高い。

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