新・酒蔵探訪37 | 2015年2月
地元産の米での酒造りで地元の農業を守る。
若関酒造株式会社 | 郡山市久留米
▲田村町谷田川の酒蔵
若関酒造の本社は、郡山市の中心部に近い住宅街にある。蔵の創業は文久年間、山田平四郎社長は6代目となる。昭和36年に中通りの酒蔵3社が瓶詰め部門を協業化。現在は市内田村町谷田川の酒蔵で醸造した酒をここで瓶詰めし、出荷している。「若関」の銘柄に加え、「さかみずき」の名も広く知られている。
東日本大震災後、郡山酒造協同組合の理事長でもあり、県議会議員も務める山田社長は自らの蔵だけでなく地元の酒蔵、そして地元の環境や産業の復興にも奔走してきた。「蔵自体の被害はほとんどありませんでした。震災の数日後からは、従業員もそれぞれ自分の家の状況などに合わせて出勤してもらったのですが、配送ができず、仕事にはなりませんでした」と、震災直後を振り返る。「そして、原発事故が起きたわけですが、当初は放射性物質に対する検査体制が整っていなかった。それも風評を広げる要因になってしまったのかもしれません」。
▲山田平四郎社長
風評被害の払拭、そして被災地支援の動きは、震災から1ヵ月が過ぎた4月下旬頃から始まったという。「食品、菓子、そしてJAの農産物や加工品などと一緒に首都圏などでイベントに出品させていただきました。特に郡山市内ではビッグパレットふくしまが被災し、丸2年、会議やイベントを行うことができませんでしたから、これは土産品などの販売にも大きく響きました」。
そんな中で、山田社長が現在力を入れているのが、福島県のオリジナル米「天のつぶ」での酒造りである。この米は県が15年の歳月をかけて開発した品種で、粒揃いがよく、食感、味ともに「コシヒカリ」や「ひとめぼれ」に匹敵する美味しい米といわれる。「天のつぶは、酒にしてもおいしい米です。そして、何より県外の酒造好適米に頼らず地元産の米を消費することは、地元の農業を守ることに繋がり、引いては福島県の経済を活性化することにも繋がるのです」。天のつぶを用いた酒造りは、県内の酒蔵で徐々に拡大しており、若関酒造でも商品化が進められている。
▲「若関」辛口/「若関」甘口/「さかみずき」大吟醸
若関酒造の酒は、食との相性を大切にしているという。地元を中心に愛されている「若関」普通酒は冷やでも燗でも飲みやすい。甘口と辛口とがあり、甘口で日本酒度がマイナス2、辛口でプラス3。「少し甘めだといわれますが、甘辛い味付けが多い日本の味付けにはよく合うと思います」また、「さかみずき」大吟醸は冷やしてスッキリとした味わいを楽しみたい。この他、容量も含めてバリエーションのあるラインナップを展開している。
2月6日、郡山市で「ウィンターフェスタ IN KORIYAMA 2015 新酒まつり」が開催された。19回目となった今年は、市内6つの蔵元の酒や地元食材を使った創作郷土料理を楽しむ他に、地元農家によるあぐり市や、古くから地元で食べられてきた「キャベツ餅」、最近話題の「クリームボックス」も登場し、人気を博した。
震災を経て、より〝地元〟というものを意識するようになったと山田社長は言う。「私自身、酒蔵のある郡山市田村町について、最近改めてその魅力を感じているところです。かつては水戸藩の支藩である守山藩があった場所ですが、近くには宇津峰山、一盃山といった歴史のある山や見晴らしのよい山などもあります。自分の住む場所の歴史を学ぶことは、地域への愛着も増し、町づくりにも繋がると思います」。JAや他の食品会社などとの連携も強まった中で、しっかりとしたビジョンを持って地方創生を進めていきたいと山田社長。酒造りに、そして地域の活性化に、ますますの活躍を期待したい。
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