新・酒蔵探訪 特集 | 2015年9月
インタビュー
IWC「SAKE部門」で876銘柄の頂点に
ほまれ酒造株式会社 代表取締役社長 |
唐橋 裕幸氏
ほまれ酒造株式会社
喜多方市松山町村松字常盤町2706
Tel.0241-22-5151
https://www.aizuhomare.jp/
▲IWC授賞式での唐橋社長(中央)
全国新酒鑑評会で金賞受賞数3年連続日本一を達成するなど、全国的に評価の高い福島県の酒だが、この夏、世界的なコンペティションで福島県の酒がチャンピオンに輝くという嬉しいニュースが飛び込んだ。「IWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)2015」の「SAKE部門」で、喜多方市のほまれ酒造の「会津ほまれ播州産山田錦仕込 純米大吟醸」が、出品した300蔵876銘柄の最高賞「チャンピオン・サケ」に選ばれたのだ。今回は代表取締役社長の唐橋裕幸氏に、受賞の喜びやこれからのことなどについて話を伺った。
IWCは世界最大規模のワイン・コンペティション。毎年1万3千銘柄を超えるワインが出品され、第一線で活躍する400名近いワイン専門家によって審査が行われるという。「SAKE部門」は2007年に設けられたもので、7つのカテゴリーごとにゴールドメダルを決め、その中でもレベルの高いものに「トロフィー」が与えられる。そして、7カテゴリーのトップである「トロフィー」を獲得した酒の中から、全体の最高賞として「チャンピオン・サケ」が選ばれる。
(左)純米大吟醸酒
(右)播州産山田錦仕込
ほまれ酒造では、このIWCで3年連続ゴールドメダルを受賞してきた。海外のコンペティションへの出品は、震災後社長に就任した唐橋氏が積極的に取り組んできた戦略の一つ。海外で評価されることで日本での評価も高まる。そんな狙いを持って出品を続けてきた。
そして、今年は純米吟醸酒・純米大吟醸酒の部のトロフィーを受賞。実は全体の最高賞である「チャンピオン・サケ」の発表はロンドンでの授賞式当日に行われるもので、もちろん唐橋社長は受賞できるとは思わずに渡英した。「実際にチャンピオンだと発表されたときには、頭が真っ白になりました」と、授賞式を振り返る。当日は、やはりトロフィーを受賞していた喜多方市の夢心酒造の東海林伸夫社長も同行していた。唐橋社長と東海林社長といずれ福島県からチャンピオンをと県内の酒蔵に呼びかけ、一緒に頑張ってきた仲だという。「一緒に受賞を喜んでくれ、本当に嬉しかった」と、唐橋社長。
チャンピオンに輝いた「播州産山田錦仕込 純米大吟醸酒」は、審査においてバランスの良さが高く評価されたという。「落ち着いた華やかさ、南国のフルーツを思わせるフルーティーさがあり、甘みと酸味のバランスが良い。また、スムーズな切れ味とともに余韻も残るといった評価をいただいたようです」。しかし唐橋社長は、今年特別なことをしたわけではないという。「毎年、同じようにやってきただけです。一定に品質を作り続ける、再現性を大切にしています」。
一方で、IWCの知名度年々高まっている中で、最高賞を受賞したほまれ酒造への期待も大きい。「福島県からの出品も増えています。今回の受賞がいい刺激になればと思います」。現在、唐橋社長は、県内の若手蔵元の集まりである「福島県醸友会」の会長を務めている。以前からIWCに向けての勉強会を開催してきたそうで、今後も酒蔵間で切磋琢磨していきたいという。
唐橋社長はまた、地域の活性化にも繋ぎたいと考える。「福島の復興には、県外の方に実際に福島に足を運んでもらうことが一番。そのツールとして今後、酒蔵の役割は高まっていきます。アメリカのナパバレーのように酒蔵を巡るツアーが盛んになれば、その周辺への経済効果も期待できます」。
今回の世界チャンピオンの称号に満足することなく、変わらぬ酒造りを続け、会津の、そして福島県の酒のさらなる躍進と、酒にとどまらない地域の活性化をも目指す唐橋社長。その姿勢も誇らしく、頼もしいものである。
※「播州産山田錦仕込 純米大吟醸酒」は完売しました。ご了承ください。
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