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新・酒蔵探訪 特集 | 2015年10月

インタビュー

日本酒の見直しやウイスキー製造の本格化
創業250年を機に、先に向けた流れを作りたい


笹の川酒造株式会社 代表取締役 |
山口 哲蔵氏

笹の川酒造株式会社
郡山市笹川1丁目178
Tel.024-945-0261
https://www.sasanokawa.co.jp/

▲創業250年を機に敷地内の看板も一新

 郡山市の笹の川酒造は今年、創業250年を迎えた。9月9日には敷地内にある酒造りの神をまつる松尾神社で祭礼が行なわれ、合わせて山口社長は、今年4月の「5代目山口哲蔵」襲名を報告した。

 笹の川酒造の創業は1765年、明和2年。これより前の宝永7(1710)年には、猪苗代湖の南岸にある舟津地区の山口家に酒札の記録が残されており、その後寛保2(1742)年に当時の郡山村に移ったそうで、それから20年余りを経て、本格的な酒造りが始まった。時代は移り、大正9(1920)年に株式会社山口酒造店、昭和7(1932)年には山桜酒造合資会社を設立。合成清酒醸造免許やウイスキー製造免許、さらに焼酎・アルコール製造免許や洋酒類製造免許も取得し、現在に至る。創業者の初代・朝之丞宗友から数え、山口社長は10代目の蔵元になる。

▲山口哲蔵社長

  「250年の間には何度か廃業の危機もあったようです。山も谷も乗り越え250年続いてきたということに感慨深いものがあります」。先に紹介したように、社長は今年、「5代目哲蔵」を襲名した。「歌舞伎など芸を磨くことで到達する襲名とは違い、そんなにお目出度いものではないのですが」と言う社長だが、やはり名前の重さは感じているという。「何代も受け継いできたものを次代に渡す、代を繋ぐための『襲名』だと思っています」。

 創業250年の節目を迎え、笹の川酒造では今年の造りから日本酒の見直しを行うという。「商品が増えすぎてしまったので、ブランドやアイテム数を整理しようと思っています。また、これまでは鑑評会で金賞を獲ることが大命題でした。もちろんその結果技術の向上も図れました。ただ、鑑評会はエネルギーもコストもかかります。これからはむしろ、地元の米をもっと積極的に使うなど、地元との繋がりを重視した酒造りをしていきたい。そんなことも考えています」。今年から秋田の山内杜氏を迎え、間もなく新しい笹の川の酒造りがスタートする。

▲casaで行なわれたライブの様子

 また、ウイスキー製造も本格化する。笹の川酒造は昭和21(1946)年にウイスキー製造を開始した、東北では唯一の地ウイスキーメーカーだ。昭和50年代にヒットした「チェリーウイスキー」を思い出す方も多いだろう。また、「ピュアモルトウイスキー山桜」、「ブレンデッドウイスキー山桜」も限定出荷され、話題を呼んだ。年明けには工場内にウイスキーの蒸留器ポットスティルを導入し、新たな原酒の製造を始めるという。

 そしてもう一つ、創業250年を記念して開設されたのが、敷地内の空き倉庫を活用した「アートスペース傘casa」だ。地域の若者が運営し、絵画や写真の展示や音楽ライブ、パーティーなどさまざまな利用を目指しているという。「こんな古い倉庫が役に立つのかと驚いています。ただ、こういったスペースがあることで、今後たくさんの方に酒蔵に足を運んでいただき、酒とふれあうきっかけになればと思っています」。  

(左)昔ながらの酒槽しぼり 大吟醸原酒
(右)YAMAZAKURA rare old whisky 250周年記念ボトル(数量限定)

 今、創業250年を記念して発売された、2つの商品が話題を呼んでいる。「昔ながらの酒槽しぼり 大吟醸原酒」は、酒造好適米「山田錦」を40%まで磨いて丁寧に仕込んだ自慢の逸品。また、「YAMAZAKURA rareold whisky 250周年記念ボトル」は、40年を超える熟成を経たバーボンの原酒を元にブレンドしたもので、1本ごとに手づくりで作成されたガラスのボトルや、「アートスペース傘」のクリエイター達が作った杉箱、1本1本コルクの上に施した封蝋も美しい。

 「250周年記念事業として、さまざまなことをスタートさせましたが、いずれもすぐに結果の出るものではありません。先に向けた流れを作る。それが今、私のやるべきことだと思っています。日本酒を中心に、ウイスキーや焼酎、リキュールなど総合酒類メーカーとして安定できるように、時間をかけて体制を整えていきたいと思っています」。

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